今後の賃上げは国際水準の賃金にサヤ寄せ

今年の春闘はちょっと様子が違います。トヨタやホンダは1回目の交渉で満額回答ですし、交渉前から大幅賃上げのアナウンスをする企業が多く見られます。例えば三井住友銀行は大卒初任給を5万円引き上げること表明し、ベースアップ約2.5%に賞与アップなどで昨年比約7%の賃上げとなる見込みです。同じメガバンクのみずほ銀行は約6%、三菱UFJ銀行は約5.5%の賃上げと報道されています。そうなると生保や損保もこれに並ぶ賃上げが予想されます。事業会社の場合従業員数が多いことからここまでの賃上げはないでしょうが、大企業の場合3~5%の賃上げが普通になると考えられます。

なぜこうなったというと、昨年来物価が上がり大幅な賃上げをしないと従業員の生活が成り立たなくなっていることが最大要因ですが、それ以外に2つの要因があると思われます。1つは賃上げが人材獲得競争に直結することです。最近の人材採用は頭数を揃えることよりも優秀な人材を獲得することに重点が移ってきました。その結果優秀な人材なら入社時点でも高給となるような給与制度になってきています。これとのバランスから給与全体の見直しが必要となっています。2つ目は国際賃金格差の是正です。今年1月ユニクロが給料を約40%引き上げると発表し日本企業賃上げの先駆となりましたが、この最大の理由は国際賃金格差の是正でした。ユニクロは世界各地に店舗を展開していますが、日本人の給与は世界でも低い方に入っていたようです。同じ仕事をしており、かつ本拠がある日本人の給与が子会社の外国社員の給与より低いと言うのは恥ずかしいとも言えます。ユニクロの柳井社長は世界同一賃金を目指しているように思われます。これは日本の大企業の多くで意識されて来ています。例えば世界的大企業であるトヨタにおいては、豊田社長の昨年の報酬は約6億円ですが、米国や欧州籍の役員には10億円超の人がいます。これは現地の役員報酬を基準にしないと優秀な人を役員にできないことが原因のようです。この結果日本の本社の日本人役員は米国や欧州の子会社の役員より低い報酬になっています。トヨタの場合開発や生産の重要部分は日本人が担っており、利益に対する貢献は日本人が最も大きいと考えられます。なのに役員報酬は米国や欧州籍の役員より低いと言うのは不条理と言え、是正が必要となっています。日本企業でもソニーや武田製薬などは完全に欧米型の世界同一賃金に移行しており、こちらに引っ張られる日本企業が多くなっています。

こう見てくると今年の賃上げは一時的なものではなく、日本人の賃金が国際水準にサヤ寄せするためのスタートとなりそうです。