NHK稲葉会長は自民党NHK族議員の操り人形
今年1月に就任したNHKの稲葉会長が3月1日、職員向けに「改革の検証と発展へ」と題したメッセージを発信し、前田前会長が行った人事制度改革について、「専門家集団の仕事は尊敬されるべきだというNHKが本来大事にしていた理念とは異なるものとなっている」と述べ、見直す考えを示したということです。人事制度だけでなく、営業、関連団体に関する改革も井上副会長を中心とした専門チームを設置して再検証するということですから、前田会長が行った改革を全面的に見直すということを意味します。
前田会長の人事制度改革では、職務別採用による弊害(ずっと同じ仕事)を是正したほか幹部候補者の選抜試験導入などを通じ、若手の登用を図りました。その結果「シニア層や中堅層に不満や怒りが充満し、それを見た若手も不安を抱いて次々と退職している」という声があるとのことです。これについては、前半は誰でも予想できることですが、若手の退職については歪曲されています。若手が退職するのは、NHKが国民の憎悪の対象となっており、いずれ解体されることが明らかだからです。ネットの書き込みにはNHK受信料に対する怨嗟の声が溢れていますし、受信料の手本となった英国のBBC受信料は2028年3月までの廃止が確実視されています。またフランス国営放送の受信料は昨年5月に廃止されました。これらを知ればNHKに将来性がないのは明らかであり、若手なら転身を考えるのが当然です。若手の退職では近江友里恵アナや堀菜保子アナの退職がマスコミで報じられましたが、2人とも学生時代の専攻を活かすための転職であり、極めてまともな転職と言えます。前田改革に不満を持つNHK職員がこれらの真っ当な退職まで前田改革のせいにしていることが、却って前田改革の正しさを示しています。
NHKは年間約7,000億円の受信料収入を消化することが最大の業務となっています。そのため全国に地方放送局を有し、過剰な職員の受け皿としています。福岡放送局など40歳を超えた男性アナを中心に15名のアナウンサーが在籍しており、年配アナの養老院と化しています。今回前田会長が改革の対象とした関連会社も同じです。コロナや物価高で生活が苦しくなっている中で、国民は月2,000円を超える受信料に耐えられなくなっており、前田会長の改革には大義がありました。
営業面では、前田会長が実施した営業改革により受信契約数が大きく減少していることが問題になっているようです。前田会長は、これまで悪評高かった受信契約締結と受信料徴収の外務委託を廃止し、ネット広告などによる理解促進型営業に切り替え、浮いた費用(約600億円)を受信料の値下げ原資にしようとしました。この結果今季の地上波契約件数の目標(10万件減)が昨年12月末現在で倍以上の21万7千件減、衛星契約件数の目標(4万件増)が8万5千件減と目標より大幅に減少しています。こうなるとNHKの受信料収入が値下げの前提となった計画を大きく下回る可能性があるとして見直しを検討するようです。しかしこれには大きな誤魔化しがあります。前田会長も外部委託を止めれば契約件数が大きく減少することは理解していました。その対策として政府自民党と総務省に認めたせたのが契約を締結しない人および受信料を払わない受信契約者に受信料の2倍の割増金を加算することでした。これで外部委託廃止による営業の落ち込みをカバーできると考えたのです。これが始まるのは今年4月からなので、この結果を見ないで営業改革の見直しを行うのは、先ず前田改革否定ありきであることが分かります。
日銀出身の稲葉氏がNHK会長に選ばれたことに違和感を持った人は多いと思いますが、稲葉氏を推したのは前田改革に不満を持つ自民党NHK族の大物議員であり、稲葉会長に前田改革の巻き戻しを指示している構図が見えてきます。それはNHK副会長人事からも伺えます。稲葉会長はNHK副会長に井上樹彦氏を指名しましたが、井上氏は政治部長や編成局長を務めたあと2014~2016年に理事に就任、その後子会社の社長およびNHKと民放の共同出資会社の社長を務めた65才です。井上氏の経歴で注目すべきは政治部長を務めていることです。NHKの政治部長と言えば自民党の幹部からも一目置かれる存在であり、NHKと自民党NHK族議員との窓口になっていたと考えられます。稲葉会長が井上氏と面識があったとは考えられず、井上氏の副会長就任は稲葉氏をNHK会長に推した自民党NHK族幹部の推挙によるものと考えられます。これが当たっていれば、稲葉会長は自民党NHK族の操り人形であり、これからNHKが行う政策(前田改革の巻き戻し)は自民党NHK族の指示ということになります。
稲葉会長の出身母体である日銀は、政府や財務省出身の総裁の言い成りになるしかない組織であり、職員に自主的に判断する、決定する習慣はありません。今の日銀は資金繰り破綻状態(銀行から当座預金の引き出しを求められても応じられない)であり、これは黒田総裁から言われるままに政策を実行してきたためです。稲葉会長にとって自民党NHK族議員の操り人形という実体は慣れ親しんだ日銀での生き様どおりであり、違和感はないと思われます。
こんな稲葉会長ではNHKスクランブル化は望みようがなく、スクランブル化を実現するには自民党政権を終わらせるしかありません。そのためにはあらゆる選挙で自民党候補に投票しないことが必要です。