楽天銀行は上場申請取り下げ?

住信SBIネット銀行が3月29日に上場することが決まったようです。住信SBIネット銀行は昨年も3月の上場が決まっていましたが、市場環境が悪いと中止しました。その間隙を衝いて住信SBIネット銀行とネット銀行トップを争う楽天銀行が昨年7月4日に上場を申請しました。住信SBIネット銀行は昨年10月7日に上場を申請し、上場審査に約5カ月かかっていますので、楽天銀行は普通なら昨年11月には上場を認めら、12月には上場していたことになります。これが未だ上場を認められていません。この原因は、上場審査が佳境に達した昨年9月に楽天モバイルで社員と取引先が共謀した詐欺事件や楽天ショッピングの配送委託先が楽天グループ(楽天G)を訴えた事件が報道されたことや、その後発表された楽天モバイルの赤字が嵩み楽天Gの資金繰りに不安が生じたことです。いずれも上場審査においては致命的な事象です。このため楽天Gでこれらが解消されない限り楽天銀行の上場は認められない可能性が高くなりました。そこに上場を再申請してきたのが住信SBIネット銀行であり、楽天銀行はネット銀行としては住信SBIネット銀行と遜色ないことから、楽天Gの問題と切り離して住信SBIネット銀行と同時上場も予想されました。今回住信SBIネット銀行の上場日が3月29日となっていることから、同時(同月)上場の可能性は無くなりました。3月中の上場承認、4月上場の可能性は多少ありますが、期をまたぐ上場は見たことがなくたぶんないと思われます。

そうなると申請時の決算(2022年3月期)を過ぎることになり、新しい決算(2023年3月期)に基づいて申請をやり直し再審査となる可能性が高いと思われます。そうだとすれば楽天銀行の上場申請取り下げが3月中に発表されることになりそうです。

1997年に山一証券が破綻した日に山一証券の当時の社長が「私らが悪いのであって社員は悪くありませんから」と号泣しながら語ったのが今でも記憶にありますが、楽天銀行があのときの社員の立場です。しかし楽天Gの三木谷社長が社員を庇うとは思えず、言うとすれば「しょうがないんじゃないの」くらいだと思われます。そもそも楽天モバイルの赤字が嵩まなければ楽天銀行を上場させる必要はなかったのであり、今期楽天G全体の赤字が止まれば(楽天モバイルの赤字が約2,000億円以内に留まればネット事業の黒字約2,000億円で埋められ、楽天Gの赤字は止まる)楽天銀行は上場を目指さない選択もあり得ると思われます。