熊本の勉強ができる子供は県外に進学する

今年3月まで中学硬式野球熊本泗水(しすい)ボーイズに所属し、九州学院からヤクルトスワローズに入団し昨年3冠王になった村上2世との評価がある吉野 颯真(そうま) 君は、四月から高校野球の強豪校大阪桐蔭高校へ進学することになったようです。熊本のニュースで取り上げられていたので吉野君はてっきり熊本出身だと思っていたら、鹿児島出身鹿児島在住で泗水ボーイズの練習がある土日だけ(金曜の夜から)熊本に来ていたということです。吉野君は12歳のときU12カル.リプケン少年野球世界大会の日本メンバーにも選ばれており、小学生のときから全国で注目されていたようです。現在の体格が身長190㎝、体重100kgと村上選手並みであり、フリーバッティングでほとんどの打球が場外へと消えていくなどバッティングセンスが優れているようです。大阪桐蔭高校野球部の昨年のキャプテンは泗水ボーイズ出身(カル.リプケン大会出場)であり、泗水ボーイズと大阪桐蔭高校にはしっかりしたパイプが確立しているように思われます。

吉野君の大阪桐蔭高校進学のニュースを見て、以前秀岳館高校野球部の監督を務め春夏連続3回準決勝まで導いた鍛治舎監督が言っていた次のような言葉を思い出しました。

「熊本の野球をやっている中学生は甲子園で日本一になるために大阪の高校に進学し、甲子園に出場するために熊本の高校に進学する。」

これは甲子園に出場することだけを考えたら高校野球のレベルが低い熊本の高校に行った方が良いが、日本一になることを考えたら大阪(他県)の高校に進学しないとダメだということを言っています。熊本の高校野球指導者に奮起を促すために言った言葉ですが、馬鹿にされたと感じた熊本の高校野球関係者を怒らせてしまったようです。鍛治舎監督は早大野球部および松下電器野球部時代も有名な選手で、松下電器では専務まで務めたおり、日本のトップレベルの競争を勝ち抜いてきた人です。また少年硬式野球チーム枚方ボーイズの監督も務めており、枚方ボーイズを日本有数の強豪チームに育てた実績があります。鍛治舎氏が2014年秀岳館高校野球部の監督に就任後枚方ボーイズの教え子が続々と秀岳館高校野球部に入学したため、秀岳館高校は瞬く間に甲子園で優勝を争うチームになりました(2016年春、夏、2017年春の甲子園で準優勝)。一方日本のビジネス界や野球界のトップレベルのやり方を熊本に持ち込んだ鍛治舎監督は周囲と相当の摩擦を生んだようで、秀岳館は2017年に解任を考えたようです(選手父兄からの嘆願で任期延長)。結局その心労もあってか2017年に突発性不整脈を発症し退任しました。吉野君の今回の大阪桐蔭高校進学は鍛治舎監督が言っていたことがそのまま実現しており、今後も続くと考えられます。

さらに心配されることは、これが勉強の面でも起きることです。文部科学省が実施している全国学力テスト結果によると熊本の小中学校生の学力は全国下位(30位台?)にあります(熊本県教育委員会の3カ年計画ではこれを平均レベルに持っていくことを目標としている)。そのため東京や大阪など教育レベルが高い地域から転勤などで来てる親は、子供を中学から熊本県外の学校(主に私立中高一貫校)に行かせることになります。これは医学部や東大などを目指す子供では今でも相当行われています。私が会った中では現在東証グロース市場に上場している医薬品開発ベンチャー㈱ヘリオスの鍵本社長は熊本市内の小学校から福岡県久留米市の久留米大付設中学・高校に進学していました(その後九大医学部進学、卒業後当社起業)。熊本市内だと勉強ができる子供は熊本高校を目指すのか思ったらそうではないようです。先ずは中学から灘やラサール、久留米大付設、青雲などを目指し、それがかなわなかったら、あるいは家計の事情で私立には進学できない子供が熊本高校に行くようです。熊本高校の偏差値を見ると74,75になっていますが、これを考えると大学進学実績がショボ過ぎます。それは高校進学後の授業や環境が良くないせいだと考えられます。今後熊本の勉強ができる子供は野球がうまい子供と同じ様に中学や高校から県外に進学するようになると思われます。