女優らの社外取締役就任で取締役会がお花畑化
ヤフーニュースに元フジテレビアナウンサーの中野美奈子さんが四国電工の社外取締役に内定したと言う報道がありました。最近大企業が女優や元女子アナウンサー(元女子アナ)、元スポーツ選手などを社外取締役にする事例が多くなっており、「またか」という印象です。これは2021年6月に東証がプライム市場に上場する企業に社外取締役の割合を3分の1以上にすることを求めるガバナンスコードを制定したことが原因です。更に政府が2030年までに女性役員比率を30%まで引き上げることを目標に掲げたことがこれを後押ししています。
大企業の場合社外取締役には大口取引先や取引銀行などの役員に就任をお願いすれば要件を満たせるのですが、このうち1名は独立社外取締役でないといけないとされ、これの確保が難題となっています。独立社外取締役とは社外取締役の中で企業の内部者から一定の独立性を有している取締役のことで、親会社・子会社や関連会社の役職員ではないこと、当該会社の主要な取引先でないことなどが要件となっています。こうなるとなかなか適任者がいません。そこで企業からの独立性と言う要件を満たす有名な女優や元女子アナ、元スポーツ選手などが候補として浮上しているようです。しかし取締役と言えば会社で成果を上げたサラリーマンが就任するポストと言う印象が強く、女優や元女子アナ、元スポーツ選手が社外取締役、それも一番重要な役割となる独立社外取締役に就任することには違和感が強く、また制度の主旨を逸脱している感じがします。会社の取締役に就任するには、最低企業活動に対する理解が必要であり、経営の監視に役立つ技術やノウハウ、見識が必要です。果たして最近社外取締役に就任した女優や元女子アナ、元スポーツ選手はこのような社外取締役が持つべき条件を満たすでしょうか。私の判断ではノーです。多分ヤフーニュースで投票してもノーが大多数を占めると思われます。四国電工では中野さんに「社内の多様性や女性活躍の推進に向けた助言を期待している」とのことですが、空虚な理由付けです。中野さんはフジテレビのアイドル女子アナとして人気を博しましたが、結婚退職後は特段の実績はありません。中野さんが四国電工の本社がある香川県在住であることことと、4月に岸田政権が設置した「こども未来戦略会議」の委員に就任したことが選ばれた理由のように思われます。委員就任は実績があったからではなく、話題作りのためだと思われます。
中野さんのような元女子アナなどが社外取締役に就任する事例が続くもう1つの原因は、彼女らが取締役会で会社が提出する議案に反対することがないからです。反対するには議案の内容を理解でき、適法性や妥当性を判断できることが必要ですが、そのような能力は持ち合わせていませんから、反対は有得ません。会社の重要な決議については、取締役会で取締役の3分の2以上の賛成が必要となるため、会社としては社外取締役3分の1のうち1名は会社が提出する議案に無条件に賛成する人が望ましく、彼女らはもってこいなのです。このため中野さんのような有名女性の社外取締役が増えていることになります。これは取締役会の形骸化、もっと言えばお花畑化になります。投資家としてはこのような会社の株は買わないことが賢明です。