朝日新聞と朝日デジタルに分社すればよい

朝日新聞が5月1日から宅配購読料を月4,400円から4,900円へと500円値上げしました。2021年7月に値上げしていますのでわずか1年10カ月での再値上げです。業界トップの読売新聞は1年間据え置くと表明していますので、目立つ結果となっています。値上げの原因は世界的な物価上昇による紙代や印刷代の上昇なので、悪質な値上げではありません。販売部数が減少している中での已むに已まれぬ値上げと言ってよいと思われます。

この値上げについては朝日新聞OBも「非常に驚いた」と言っています。そして「ついに覚悟を決めなければならない時が来た」と言っています。その通りだと思われます。新聞の販売部数は毎年5%以上減り続け、2000年の約5,370万部から2022年に約3,084万部へと約44%減少しています。このままのペースで減り続ければ計算上あと20年で0となります。新聞社の経営には規模が必要ですから、20年とは言わずあと10年以内に全国紙は2社(読売と日経)になるとの見方もあります。たぶん当たっていると思われます。そうだとすれば全国紙である朝日新聞、毎日新聞、産経新聞は業態を変えるか、廃業しかなくなります。産経新聞は値上げの代わりに120人の希望退職者を募集するようですが、これは一時凌ぎに過ぎません。販売部数の減少に加え紙代や印刷代の値上げは今度も継続的に続くと思われ、紙売りの新聞社としての経営は立ち行かなるのは明確です。読売新聞や日経も宅配システムはいずれ維持できなくなると考えられます。そこで全国紙各社はデジタルメディアに転換できるかどうかが生き残りのカギとなります。

ここで一番先行しているのは日経で、2022年12月で紙の販売部数が約165万部に対して電子版が約82万分と電子版の割合を増やしています。一方朝日新聞も2021年からデジタル化に舵を切り、現在の新聞のデジタル版と言える月額1,980円の「スタンダードコース」を新設して、宅配新聞からの移行を図っています。現在有料会員数が31万人となっているようですので、それなりの効果は出ていると言えます。朝日新聞は今回の値上げで紙の新聞には見切りを付けたと思われ、あとはデジタル版の有料会員数を増やし、早く持続可能な経営体制を確立する必要があります。その為の有料会員数の1つの目途は100万人になると考えられます。100万人がスタンダードコースを契約すると毎月1,980円×100万人=19億8千万円(約20億円)の収入となりますから、年間にすると約20億円×12=240億円の収入となります。コストは紙代、印刷代、宅配代、営業費など大幅に削減されますし、人員も今の約4,000人が約1,000人で済むようになります。人件費は年間1,000万円×1,000人=100億円となり、その他のコストを年間50億円として、合計150億円のコストとなります。結果240億円-150億円=90億円の利益が可能となります。従ってデジタル化を進めれば十分生き残りは可能と考えられます。勝負はこの具体像を描き、実現に向けて突進できるかどうかにかかっています。その場合のやり方として朝日新聞から朝日デジタルを分社し、朝日デジタルがデジタル版の拡販を推進することが考えられます。こちらは若手中心としてデジタル人材を集めます。記事は朝日新聞から提供しますから、朝日デジタルはデジタルニュース配信専門会社となります。最初は赤字続きですが、数年で黒字化し、いずれ朝日新聞が全面的に朝日デジタルに移行することとなります。朝日新聞内でデジタル化を進めるよりこちらが早道です。