トヨタグループ不正続発は番頭廃止が原因

ダイハツが認証で不正を行っていたと言う報道です。トヨタ向けのOEM製品での不正と言うことでトヨタの信頼に傷がついた格好です。最近トヨタグループでは不正が相次いで発覚しています。昨年は日野の大規模な型式不正が発覚しましたし、その前にはトヨタの販売店で車検不正が発覚しています。トヨタは売上高約30兆円、営業利益約3兆円を誇る世界一の自動車メーカーで、創業者一族の豊田章男会長が率いる優良企業であり、経営体制は盤石なように見えます。そんな中で続発する不正の原因はどこにあるのでしょうか。

豊田会長に原因を求めざるをえません。豊田会長と言えば本人も認める創業者一族のお坊ちゃま経営者で、人柄の良さは折り紙付きです。豊田会長と接したことのある人で豊田会長を悪く言う人はいないのではないでしょうか。私には昔米国で大規模リコール問題が起き、米国工場の従業員を前に涙を流して謝罪した場面が記憶に残っています。これはプロの経営者から言えば甘さとなるかも知れませんが、この場面に居合わせた従業員にとっては、豊田社長は「いい人」であり「信頼できる人」という評価となります。このように豊田会長は利益を増やす経営技術でなく、部下や従業員の信頼を得てトヨタを良くしてきたように思われます。豊田会長と部下や従業員は信頼関係で結ばれており、不正が入り込む余地は少なかったと思われます。その結果トヨタ車の品質は高い評価を得て、販売を伸ばして来ました。

トヨタのこれまでの経営では番頭的経営幹部が重要な働きをしています。石田退三氏が最も有名ですが、2020年まで古参の副社長がその役割を果たしていたように思われます。しかし2020年豊田社長は副社長・専務を廃止し、実質的に番頭を廃止しました(番頭職を設けたが形式的)。これは徳川幕府において大老、老中を廃止したことに相当します。その他に執行役員も23人から9人に減らし、権力が豊田社長に集中する体制としました。これがその後トヨタグループで不正が続出する背景になっているように思われます。豊田社長は性善説的経営者ですから、実質的な番頭がいなくなれば監視が行き届かず不正を行う隙ができます。数十万人に及ぶトヨタ社員の中には不正の誘惑に弱い輩もいますから、それがこのような環境を感じ取り不正の実行に至ったと思われます。もちろん日野のように不正は古くから始まっており、番頭制廃止とは関係ない例もありますが、多くは番頭制廃止により顕在化して行ったと思われます。

それでは番頭制を復活(2022年副社長職復活。しかし初心者副社長では番頭は務まらない)したら不正は無くなるかと言うと、減ることは間違いありませんが無くなることはありません。無くすためにはシステムを改善するしかないと思われます。例えばダイハツの認証不正ではテストに不正なパーツが用いられていますが、これを注文した時点で購買システムや認証検証システムで複数の部署に異常を通知するようにする必要があります。開発や製造での不正は、決められた手続きを逸脱するものであり、ITシムテムで異常を検知できます。トヨタの性善説経営は素晴らしいものであり、これを続けるべきですが、そのためには正常な手続きを逸脱した場合には逃さず異常を発見するシステムの整備が必要であり、トヨタに欠けているいるように思われます。