NHKはネット業務の本来業務化で受信料恒久化
NHKのインターネット業務の位置づけを話し合う総務省の有識者会議が26日開かれ、NHKの井上樹彦副会長にヒヤリングしたということです。その中で井上副会長は、NHKのネット業務を放送と同等の「必須業務」にする場合、テレビを持たずにNHKのネットサービスを利用する層にも「(放送の受信料と)同様の負担をいただくのが適当ではないか」としましたが、スマートフォンやパソコンなどネットに接続できる機器を持っているだけで受信料を徴収する可能性は否定したということです。先ずは無難な答弁と言えます。
実はNHKのネット業務拡大の狙いは、スマホからも受信料を取ることではなく、ネット業務を「任意業務」から「必須業務」(本来業務)に組み込むことです。現在放送法ではNHKの「必須業務は」放送で、ネット業務はあくまで放送を補完する「任意業務」とされており、予算が年間200億円以内に限定されています(受信料はあくまで「必須業務」である放送に使うものという考え方に基づく)。NHKが主張するように現在のようなネット社会でネット業務に使える予算を制限するのは時代に合わず、この制限を取っ払うことは必要と考えられます。ただしネット業務を放送業務と同じく「必須業務」に位置付ける必要はありません。ネット業務を放送業務と同格に位置付けるということは、受信料徴収の根拠(対象)とすることであり、受信料制度をより強固にすることが目的です。ネット業務は放送のように許認可に基づくものではなく、誰でも行える自由業務です。NHKがネット業務を拡大するのは自由であり、放送法の枠組みから出ることを意味します。NHKのネット業務拡大に反対してきたのは民放であり、これは放送利権の構造が変わることを心配してのことです。ネット業務は民放のものではなく、ネット業務の世界では民放は一参加者に過ぎません。民放はネット業務の世界でNHKを叩きのめし、NHK受信料約7,000億円を分捕ることを目指すのが正しい方向性です。
NHKがネット業務拡大を急ぐのは、NHK受信料制度の手本となった英国BBCの受信料制度が2028年3月までに廃止になることが確実な状況だからです。これは英国の保守党が2020年12月の総選挙で公約に掲げ、圧勝する原因となりましたから、先ず間違いありません。それにこれを真似てフランスのマクロン大統領が2022年3月の大統領選挙でフランス公共放送受信料の廃止を公約に掲げ、当選後の5月には公約通り廃止しました(税金を充当)から、変わりようがありません。これでBBCは狼狽するかと思ったら、そんな様子はありません。それはネットフリックスなどのネット有料放送の普及からこのような状況は想定済みであり、ネット放送局への転換(放送免許の返上)を準備してきていたからです。従ってBBCは2028年3月までに粛々とネット放送局に転換します。日本ではこのNHKに不都合な事実は新聞・テレビが報道せず、国民に知られないようにしています。私もネットでこの事実を知りました。もちろん今回の上記記事(朝日新聞)もこの事実には一切触れていません。
しかし2028年が近付けばNHKもBBCと同じく受信料を廃止すべきとの声が高まるのは間違いなく、そのときに備えNHKはネット業務を強化しておく必要があります。
NHK受信料に反対する立場としてもNHKが生き残る道は残しておく必要があり、ネット業務の強化は当然の流れだと思います。しかしそれは放送と同じ「必須業務」ではなく、「任意業務」としてです。NHKのネット業務議論のポイントはここです。ここに触れない朝日新聞はNHKの広報紙と言える存在です。