日銀ETFで「こどもファンド」を作ればよい
日銀のETF保有残高は3月末の時価で約53兆円、含み益は約16兆円(5月末で約20兆円)に達し、2022年度のETFの分配金などによる運用益は約1.1兆円に上ったということです。世界の主要中央銀行でETFを購入しているのは日銀だけで、中央銀行の金融調節業務としては異例であり、今後の取り扱いが注目されています。普通に考えれば金融緩和の正常化につれて処分すると言うことになるのでしょうが、その場合株価下落に繋がり経済を冷やす可能性があることから、簡単には行きません。それに2022年度配当金などETF関連収益が約1.1兆円に上っており、国の収入としても貴重となっています。
私は日銀ETFをいま議論されているこども対策費に活用すべきだと思います。こども対策費は来年以降年間約3.5兆円増やす方針ですが、その財源は明らかになっていません。こども対策を話し合う「こども未来戦略会議」では社会保険料への上乗せ案が出ているようですが、これは所得税増税と同じであり、選挙への悪影響を恐れる自民党で反対が多いようです。そこで政府は歳出削減で財源をねん出すると言っていますが、その案として扶養控除の削減が浮上しており、これでは増税になる人が多く反発の声が上がっています。このように歳出削減は今行われている給付を減らすか、所得控除額を減らすと言うことであり、結局利益を受ける人よりも不利益を受ける人の方が多くなってしまいます。そうなると政府は選挙で国民の支持を得ることは難しくなります。
この問題を解決するには、国民負担が生じない新しい収入源を確保するしかありません。その候補として日銀が保有し、処分が問題となっているETF関連収入が考えられます。日銀保有ETFの今年3月末の時価が約53兆円で含み益が約16兆円と言うことは、簿価は約37兆円となります。配当などこのETF関連の収入が約1.1兆円ありますので、利回りは約3.0%(1.1/37×100)となります。これは企業の利益が原資となっており、国民負担は生じていません。安倍政権時代に法人税を世界基準に下げましたが、企業はその分を内部留保に回し、個人の所得は余り増加しませんでした。そのため法人税が増えないばかりか所得税も余り増加していません。しかし配当額は増加しており、今後は東京証券取引所が上場企業にPBR1倍割れの解消を求めていることから更に増加することが期待できます。政府としてもこの流れを取り込む必要があります。10兆円の大学ファンドはこの考え方に基づいたものであり、年金積立の運用においてもこの流れに乗っています。そこで国でこどもファンドを設定し、日銀から簿価でETFを引き取ると共に運用額を100兆円まで増やすことが考えられます。日銀は国の子会社(財務省が出資口の55%を保有する)であり、簿価での引き取りが可能です。日銀は上場企業であり問題があると言うのなら、上場を廃止し国の100%子会社にすればよいのです。そもそも中央銀行が上場していることが異常であり、東証の上場基準も満たしていません。このため2026年までに上場廃止になるのは間違いないことから、国による日銀の100%子会社は避けられません。そうなると国債を日銀が半分以上持っている状態が経済原則に反する(債権者と債務者が同じ)ことになりますが、このような機関が無いと国の財政が成り立たないことから、やむを得ないと考えられます。日銀が銀行システムにとっても不可欠な存在であることを考えると、日銀を国の100%子会社にしたのち出資口の45%を銀行に持ってもらうことも考えられます。このように日銀のETFを簿価で政府のファンドの移すことはやろうとすればできます。時価で移して発生する実現益約20兆円を「こども基金」に繰り入れることも考えられます。こども対策が必要なのは間違いありませんが、所得の上昇よりも物価の上昇が先行する中でこども対策費を国民から徴収するのは無理があり、企業の配当収入を活用する「こどもファンド」や「こども基金」の活用が合理的です。