マンション建て替え問題の本質は住人の高齢化

法務大臣の諮問機関である法制審議会は6月8日、分譲マンションの修繕などを住人が決議する際の要件を緩和する中間試案をまとめたようです。これによると住人集会の決議要件を緩和することになっています。例えば修繕などの普通決議については所有者の過半数の賛成から出席者の過半数の賛成で成立するものとしていますし、建て替え決議については、所有者の5分の4の賛成から、客観的理由があれば4分の3または3分の2の賛成で成立するとしています。客観的な理由には耐震性の不足や火災への安全性、外壁はげ落ちのおそれ、給排水管の腐食などを挙げています。

これを決めた法制審議会の委員の方はこのようなマンションに住んだことが無い人だと思われます。というのは、決議要件が整わない理由が分かっていないからです。例えばこれまでの普通決議の要件である所有者の過半数の賛成は、決して過大な要件ではなく当然の要件です。この要件を満たせないのは、管理会社の委任状のフォームが出席しない場合は理事長を受任者とする白紙委任状の提出を求め、書面による賛否の表明を認めていないものが多いのも原因の1つです。決議内容には反対だけれど出席して反対するのは嫌と言う人も多いのです。このように出席しない場合は白紙委任状を提出する(書面決議を認めない)というのは、管理会社の意図に沿ってマンション管理を行うためです。私もマンションに住んでいましたが、毎年総会に出席にいろいろ意見を述べていましたので、管理会社からは嫌われていました。その結果役員の順番が来て理事長に立候補しようと思っていたら、監事が割り振られていました。それならばと決算の際に全ての決算書類とその証票を確認し、会計上の不備(修繕積立金が理事会に諮らずに管理費に使われていた)を指摘するとともに、委任状フォームの改定(書面決議を認める)や常勤管理の廃止(管理費の削減)などを提案し認められました。こんな重要な議案でも白紙委任状を提出する人が殆ど(総会への出席者はいつもの顔ぶれ)だったのには驚きましたし、このときマンションはやばいことになると思い、数年後売却しました。

マンションの住人には2種類あります。1つは終の棲家と考えてそのマンションを買った人(結果的にそうなった人も)です。この方たちはマンション管理に関心があり総会にはよく出席します。2つ目は将来転居することを考えておりここは仮の宿と考えている人です。こちらは一時入居意識なので、総会に出席するはずがありませんし、委任状を取るのも大変です。この内後者の方が問題のように思われますが、実はマンション管理の本質的問題は終の棲家の住民にあります。マンションも築30年を超えてくると終の棲家として買った人たちは65才以上の年代が多くなります。こうなると収入は年金だけで貯蓄もあまりない人も出てきて大規模修理費用が不足して臨時拠出を求めても拠出できない人が出てきます。それに子供は巣立ち、今後代わりに住む人もいない人が殆どです。この人たちが建て替えに賛成するはずがありません。今後建て替えが俎上に上るマンションでは、住人の高齢化により賛成が要件を満たさないケースが多くなると思われます。老い先短く代わりに住む人がいないとなれば、建て替えに賛成できないのは当然であり、これは成立要件を緩和して解決する問題ではありません。この場合どうすればよいかというと、賛成しない住民から管理組合への買い取り請求(場合によっては転居先の確保義務も)を認めることです。管理組合は大手デベロッパーと契約して買い取った住戸を建て替え後売却して回収します。これは大手デベロッパーが関与しないと無理だと思われます。このような仕組みを考えないとマンション老朽化から派生する問題は解決しません。(マンションの土地を例えば60年の定期借地権し、60年経ったらマンションの所有権が消滅することにすることも考えられます)。