日銀のETF投資は利益相反行為

日銀のETF保有残高は3月末の時価で約53兆円、含み益は約16兆円に上りました。更に5月末の含み益は約20兆円に達しています。また2022年度のETFからくる分配金などの運用益は約1.1兆円に上っています。運用益の殆どは国庫に納入されますから国の収入としても貴重ですし、含み益は増額なった防衛費やこども対策費の財源として目を付けられていると思われます。

これで日銀が資金運用会社なら目出度し目出度しなのですが、日銀は資金運会社ではなく金融調節を主たる業務とする中央銀行です。従ってETF投資は中央銀行の業務としては奇異なように思われます。事実世界の中央銀行でETF投資を行っているのは日銀だけと言うことです。日銀のETF投資の狙いは株価を上げ、経済マインドを良くすることだと思われますが、金額が大きくなると株式市場のかく乱要因となります。私は日銀でETF投資を始めたのは、黒田総裁のときだとばかり思っていましたが、違うようです。2010年12月に白川総裁のときに始めており、そのときは残高上限4,500億円、期限2011年12月末、対象となる連動対象指数はTOPIXと日経225だったということです。金額、期限、対象に制約を設けており、抑制的です。やはりここまで残高を増やしたのは2013年3月に就任した黒田総裁で間違いありません。黒田総裁はサプライズと言われる金融政策を実施するのが好きで、投資家の性格が強かったと思われます。それは財務省で財務官を務めるなど変動の激しい市場を相手にしてきた黒田総裁のキャリアから来ているようです。

そんな黒田総裁だからこそ積み上がったETF残高ですが、冷静に考えれば金融緩和を行う主体が金融緩和で値上がりが見込めETFをここまで購入して良いかのか疑問があります。もし黒田総裁個人がETFを大量に購入していたら、利益相反して問題になっていると思われます。常識的には金融緩和で値上がりが見込めるETFを購入するのは、日銀としては望ましくないと考えられます。ここまで金融緩和を続ければ5月末で約20兆円の含み益は当然でもあり、日銀のETF投資の妥当性を問いかけることになります。日銀のETFは早く処分してこども対策費など歓迎される予算に充当した方がよさそうです。