RAPIDUSは第2の核燃料再処理工場になる?

日本において半導体関連投資が盛んになっています。TSMCも日本政府の補助金があれば熊本に第2工場を建設する意向を表明しました。その前にはTSMCの顧客であるソニーが現在の工場の近くに第2工場用を建設する計画を発表しています。これにも日本政府の補助金が付くものと思われます。更に日本政府は産業革新投資機構(JIC)を通じて半導体材料メーカーのJSRを買収し、M&Aなどを通じて規模の拡大を目指しています。半導体産業をパッケージとして強化する戦略のようです。

この戦略をリードする経産省が最も力を入れているのが2nm半導体製造を目指すRAPIDUSの育成です。RAPIDAUSは民間企業8社が総額73億円を出資して設立しましたが、これは経産省の要請に応じてお付き合いで出資しただけであり、どこも自社の事業と言う意識はありません。経産省が補助金を出すには民間企業と言う外形が必要だったようです。経産省は既にRAPIDUSに3,300億円の補助金を出しており、RAPIDUSは官営企業であることがはっきりしてきています。

2nm半導体は世界でTSMCとサムスン電子しか製造に成功しておらず、量産工場はまだありません。IBMやインテルは余りの歩留まりの悪さに製造を諦めています。日本の半導体メーカーが作っているのは40nm程度の半導体であり、2nmなど夢の又夢のレベルのようです。技術以上に日本の半導体メーカーが2nm半導体の開発を行わないのは、日本には需要がないからと言われています。2nm半導体が必要とあれるのはスマホが多いようで、TSMCはアップルへ供給するために米国アリゾナに量産工場を建設しています。サムスン電子も顧客は米国企業であるためテキサスに2nm半導体の量産工場を建設しています。このように2nm半導体は顧客があって初めて量産工場が建設できます。RAPDUSは2022年11月に設立されており、半導体に関する基盤技術を何ら持っていません。経営陣は半導体生産の経験がありますが、それは今では旧式となっている技術であり、2nm半導体との間には相当のギャップがあります。2nm半導体の製造技術はIBMが開発済みであり、IBMから技術導入する計画のようですが、IBMはかって量産化を断念しており、技術導入しても量産化できる確証はありません。RAPIDUSの経営陣は2nm半導体製造のノウハウを全く持っておらず、RAPIDUSがこの技術を手に入れるとすればTSMCやスムスン電子からノウハウのある人材をスカウトするしかないと思われますが、各国で産業秘密の保護が厳しくなった現在このような最先端分野のノウハウを持つ人材を引き抜くことは難しいと考えられます。従ってRAPIDUSが2nm半導体を製造できるようになる場面は想像できません。

ここで思い出したのが1993年に核燃料の再処理を目指して工場建設が始まった青森県六ケ所村の日本原燃株式会社の核燃料処理工場です。現在30年経ちましたがまだ処理に成功していません。これまでに使った費用は約2兆2千億円となっています(電力会社の負担。と言うことは国民負担)。

この処理施設は原発が稼働する限り必要なことから成功するまで辞めない計画のようです。

RAPIDUSがこの二の舞になる可能性があります。RUPIDAUSは量産工場の建設までに5兆円必要と言われていますが、これは順調に言った場合の試算であり核燃料再処理工場のように生産が先伸ばしになる可能性は低くないと思われます。それに顧客が全く見えておらず、顧客が確保され採算に乗るまで相当の時間を要すると考えれば、少なくとも10年の期間と10兆円の資金を覚悟する必要がありそうです。経産官僚に手に負える事業ではないような気がします。