「丁寧に説明」の意味は「結論は変わらない」

現在問題になっているマイナンバーカードを巡るトラブルで岸田首相や河野大臣が常用するのが「丁寧に説明していく」という言葉です。これは国民の不満があると政府要人が必ず使います。例えば岸田首相は7日夜、東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」海洋放出計画を巡り、原子力規制委員会が放出設備に関する使用前検査の終了証を東電に交付したことを受け、「引き続き安全性の確保について、国内外に丁寧に説明していかなければならない」と述べていますし、 同じく松野官房長官は原発処理水の海洋放出に中国が反発していることに関し「中国は事実に反する内容を発信している。中国を含む国際社会に日本の立場を丁寧に説明し、理解が深まるよう努力する」と述べています。

使っている本人の意図としては、「説明が悪いから不満が出ているだけで、詳しく説明すれば分かってもらえる」ということだと思われます。しかしその後の説明がそれまでと比べて詳しくなることはありません。当たり前です。最初に公表するとき政府としては不利益を受ける相手が納得するように十分準備して説明資料を作成し説明しているからです。更に詳しい説明などできません。だから議論が進展することはありません。そしては最初に発表があった通りに進みます。これから分かる「丁寧に説明」の意味は、「結論は変わらない」という発表側の通告だと言うことです。多分「丁寧に説明」と言う言葉が使われて結論が変わったためしはないと思います。

このことが分かれば新聞・テレビの愚かさが分かると思います。何故ならば「丁寧に説明」という言葉を最も多用するのが新聞・テレビだからです。政府や行政で問題が起きると新聞記事やテレビの解説は、最後に「丁寧に説明することが求められる」で結んでいます。「丁寧に説明」が「結論は変わらない」という意味であることが分かれば、使えない表現です。新聞やテレビとしては、「納得が得られるよう説明を続けるべきだ」という意味だと言うのでしょうが、言っている本人の意図が「結論は変わらない」と言うことだから、それ以上の説明は意味がありません。

これは文系人の限界を示しているように思われます。というのは、「丁寧に説明」と言えば理系人なら更に詳細な実験データを提供するということになるのでしょうが、文系人の場合、そんなものはもう存在しないことを知っています。即ちこれ以上の説明は不可能なことを知っていながら「丁寧に説明」と言う言葉を使っているのです。何と非生産的で愚かな人たちだと言うことになります。文系人は社会で多用されている言葉をその中身を検証せずに使用するケースが増えています。これは新聞・テレビで顕著であり、新聞・テレビが衰退している原因でもあります。