岸田首相は「甘さ」累積で長銀の二の舞

7月4日LTGBなど性的少数者への差別発言で首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏が、経産省の官房審議官に就任する人事が発表されました。経産省の幹部人事は6月27日(?)に日経に掲載されていたのに、この人事の発表が4日になったのは、批判を恐れてのことと思われます。6月27日の経産省幹部人事は日経に20名程度が掲載されていましたが、全員東大卒でした。大概の官庁で1,2名は他大学卒が混じる中で異常に感じられました。これは西村大臣の人事と思われ、西村大臣は東大卒でなければ経産官僚にあらずと考えているように思われます。西村大臣が早大卒で首相秘書官を更迭された荒井氏を官房審議官に登用するとは考えられず、これは岸田首相の人事だと思われます。

岸田首相は早大卒で、早大OBの森元首相らと良く早大を訪れていますから、早大愛は相当なものです。岸田外相のときには外務省として初めて私大卒(早大卒)の事務次官を誕生させています(その後米国大使)。そして首相秘書官に荒井氏を任命しており、新聞では経産省初の私大卒事務次官候補との評もありました。岸田首相は経産大臣の経験はなくどこで知り合ったのか不明ですが、早大人脈であることは間違いありません。

首相秘書官だった荒井氏は、今年2月オフレコの新聞記者との懇談の中で、同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ。同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」などと発言したことが報じられ、岸田政権の方針に反するとして更迭されました。あれだけの差別発言をして更迭されたら、肩たたきされて役所を辞めるか、定年まで閑職に追いやられるのが一般的と言われている中での昇格人事です。

これは岸田首相の長男翔太郎氏を首相秘書官に任命したのと同じ状況です。あのときも政治家秘書の経験が浅く行政経験もない翔太郎氏を首相秘書官にするのは無謀と言う声が圧倒的でした。この人事に岸田首相の人事に対する考え方が表れているように思われます。岸田首相は首相の権限の中で人事権に一番魅力を感じているように見えます。首相になるまで岸田氏を見下していた麻生副総裁まで岸田首相におべっかを言うのは首相の強大な人事権のためです。そのため翔太郎秘書官については2回の不祥事(秘密が漏れた疑惑、欧州での観光疑惑)では更迭など考えもしなかったと思われますし、官邸写真報道でも岸田首相は全く更迭を考えなかったと思われます。翔太郎秘書官が辞任したのは本人が耐えられなかったからでしょう。このように岸田首相は、人事権は自分の不可侵の権利であり、国民からとやかく言われることではないと考えていると思われます。それが今回の荒井審議官人事にも表れています。

岸田政権では閣僚や秘書官の更迭や辞任が相次いでおり、いずれも岸田首相の肝入り人事です(昨年辞任した葉梨法務大臣と寺田総務大臣は岸田派)。このように岸田首相が権力の源泉と考え行使した人事権は、岸田政権の信頼を落とす結果となっています。荒井氏の審議官昇格人事も岸田首相の評価を落とし、支持率にボディーブローのように効いてきます。このように岸田首相が人事で躓くのは、岸田首相の特徴である「甘さ」のためだと思われます。岸田首相には「これくらいなら良いだろう」と言う甘さがあります。だから十分考えずに人事を行うのです。この「甘さ」に基づくダメージが累積して来ており、岸田首相が約5年在籍した長銀(日本長期信用銀行)の二の舞(破綻)になる可能性が高いと思われます。岸田首相の甘さは長銀譲りです。