NHK決算を見るとまるでNHK銀行
NHKの2022年度決算(2023年3月期)が発表されました。事業収入6,965億円、事業収支差金(利益)263億円(いずれも単独決算)となっています。NHKの場合、収入は受信料でほぼ安定的ですから、業務の中身はこれをどのよう使うかということになります。ほぼ役所と同じだと言うことができます。役所の場合、予算の原資である税収が景気に左右されることと予算に比べ税収が不足していることから、毎年遣り繰りは大変になってきていますが、NHKの場合収入の大部分を占める受信料は家計の収入に関係なく一定であることから、毎年黙っていても約7,000億円の収入があり余裕綽々の経営内容となっています。
受信契約件数は4,144万件と前年比11万件減少しています。これは受信契約を解約した件数であり、この分テレビ受信機が減っていると考えられます。意外と少ない印象ですが、これから増加すると考えられ、要注目です。受信料を払っていない人の数(未収数)は141万件と前年比25万件増加しています。これは業者への回収委託を廃止した影響かも知れません。これに対しては今年の4月から不払い額に加え、不払い額の2倍の割増金の支払いが求められると言うことですから、今度未収数がどうなるか見ものです。私はテレビ受信機を破棄して受信契約を解約する人が増加すると思います。もうテレビは無くても済むようになっており、割増金がテレビ受信機を廃棄するいいきっかけになると思います。
バランスシートを見ると総資本1兆2,973億円に対して自己資本は8,865億円となっています。自己資本は固定資産の購入に充てた受信料4,684億円、放送センターに新設に充てるための受信料1,693億円、繰越剰余金2,487億円となっています。これを見ると放送センターの建設費は受信料で簡単に確保できることが分かります。また剰余金が2,487億円も積み上がっており、今まで値下げしなかったのが異常と言うことになります。
剰余金2,487億円や放送センター建設費1,693億円が確保されていることもあり、現金・有価証券が5,386億円あります。これ以外に固定資産として長期保有有価証券が929億円ありますから、現金・有価証券は合計6,315億円となり、総資産の約半分は現金・有価証券となり、NHK銀行と言える様相です。
支出を見ると国内放送費が3,193億円と前年より226億円増えています。これは、前年はコロナで制作中止やロケ中止が続いていたのが回復した影響のようです。民放トップの日テレの売上高(2023年3月期)が4,139億円ですから、NHKが如何に多額の制作費を使っているか分かります。次に大きい費用は給与で1,112億円となっています。その次は減価償却費で785億円となっています。これは放送機器の購入や地方放送局などの建て替えなどに使った金額を耐用期間に応じて費用計上したものです。減価償却費は費用ですから利益はこの分少なくなりますが、支払いは既に済んでいますので、現金は出て行きません(NHKに残る)。従って2022年度にNHKに残ったお金は利益の261億円に減価償却費785億円を加えた1,046億円となります。これでは余り過ぎと言われるので、放送機器の購入や地方放送局の建て替え等で使うことになります(投資額は993億円)。そのためNHKには最新の放送機器が揃い、使っていないものも多数あると思われます。民放からしたら羨ましい限りでしょう。
NHK放送文化研究所の調査(2019年)によるとNHKを1週間に(1日ではない)5分以上見る人の割合は54.7%となっています。これは家計の半分近くがNHKをほぼ見ていないことを意味しており、そんなNHKに国民から約7,000億円も吸い上げさせるのは不条理と言えます。昨年来の物価上昇で多くの家計は節約を迫られており、NHK受信料は尤も節約したい支出になっています。にも拘わらず総務省はNHK担当部局の仕事を確保するために、政府は世論操作の道具として、自民党の国会議員は子弟や関係者の就職先としてNHKを、受信料制度を守るのに懸命です。NHK受信料に反対する人たちは選挙で自民党に投票しないことで、自民党政権を終わらせる必要があります。
またこのまま受信料制度が続ければテレビ受信機を廃棄する人が増加するのは確実であり、テレビ業界が消滅してしまいます。今年のテレ東の株主総会で株主からこの問題にどう対処するのかという質問が出たそうなので、民放もNHK受信料が自社の存続にかかわる問題だと言うことに気付始めたと思われます。