トヨタの社長の報酬が上がれば社員の給料も上がる

報道によると昨年(2022年度)トヨタの豊田社長(現会長)の報酬は9億9,000万円だったということです。、前年(2021年度)の報酬が6億8,500万円でしたから、約1.5倍となっています(2020年度は4億4,200万円)。内訳は固定報酬が2億6,400万円、株式として受け取れる報酬が7億3,000万円ということです。トヨタの業績は売上高では前年よりも18.4%増の37兆15,42億円と過去最高、営業利益は原材料価格の高騰などで前年度よりも9%減の2兆7,250億円でしたから、社長の報酬は利益の増減だけでは決まらないようです。その決め方はというと、株主総会で取締役報酬の総額を決め、配分は社外取締役を中心とした報酬委員会で決めています(豊田社長はメンバーではない)。トヨタの場合取締役報酬額は、現金報酬枠が年額30億円以内(うち社外取締役3億円以内)、株式報酬枠が年額40億円以内と定められているとのことです。報酬決定のポイントは「連結営業利益」「時価総額の変動率」「個人別査定」の3つで、評価のウエートは連結営業利益が70%。時価総額の変動率が30%ということですから、豊田会長の報酬が10億円を超えなかったのは連結営業益が前年を9%下回ったためと考えられます。豊田社長以外の取締役では前代表取締役会長でエグゼクティブフェローの内山田竹志氏が3億1,900万円、代表取締役副会長の早川茂氏は1億5,100万円となっています。日立では1億円を超える報酬の取締役が20名に達していますが、トヨタは5名程度のようなので、やはりトヨタの報酬体系は渋いと言えます。

他の自動車メーカーは、日産:内田誠社長6億7,300万円 、ホンダ:三部敏宏社長3億4,800万円 、マツダ:丸本明前社長1億1,200万円 、スバル:中村知美前社長1億2,300万円 、三菱:加藤隆雄社長1億3,300万円 、スズキ:鈴木俊宏社長1億7,200万円となっています。ゴーン事件後業績が悪化し、生き残りの瀬戸際にある日産の内田社長が6億7,300万円もの報酬を得ているのは説明不能です。やはり日産は危ないと見た方がよさそうです。

2020年にトヨタ社長の報酬が4億4,200万円と報道されたときのヤフーコメントでは、儲かっているトヨタの社長が報酬を低く抑えていることに対して絶賛の声が多数でした。しかし今回は安すぎるという声が多いようです。ある記事から2つ引用すると、

《豊田章男の報酬少なくね 9億ってF1ドライバーの年俸だと中堅くらい もっと貰ってもいいのでは》 《豊田章男さんの役員報酬が9億9千万円と聞いてびっくり。少なすぎるだろう。会社の規模からして少なくともその10倍は貰ってもおかしくないのに。売り上げ何兆円の会社のトップが大谷選手より少ないとか可哀想すぎる。忙しすぎてプライベートなんか殆ど無いだろうに。》

大谷選手の活躍でメジャーリーグを見る人が多くなり、そこでは年俸30~50億円がゴロゴロしており、中堅選手でさえ10億円以上となっています。これを見ると売上高約37兆円企業のトップである豊田社長の報酬は、メジャーリーグトップと並ぶか上回っていて当然という気になってきます。現在今期末にFAとなる大谷選手の契約金が話題になっており、年俸6,000万ドルの10年契約で6億ドル(1ドル140円換算で840億円)という声が多いようです。私は,大谷選手は晩年のプホルス選手や現在のレンドーン選手など高給に見合った働きができない状況を見てきていますので、長期契約は望まない(年俸8,000万ドルの5年契約)のではないかと思いますが、どうも大谷選手にはメジャーリーガーの報酬水準を引き上げる責務があるようなので、そうもいかないようです。

欧米の経営者の報酬が高いことは良く知られていますが、日本の企業でも少しずつ欧米型に変化しています。日本企業の日本人経営者ではソニーの吉田社長が約19億円、東京エレクトロンの河合社長が約17億円(以上2021年度)となっており、両社の3倍以上の企業規模と業績を誇るトヨタの社長の報酬は約30億円程度が座りが良いと思われます。こうなれば他の会社も役員報酬を上げることとなり、これに引っ張られて従業員の給料も上がることになります。従って一般人が豊田社長の報酬を安いと考えるようになったことは良い傾向だと思えます。