損保ジャパンの社外調査委員会に怪しい影
ビッグモーター(BM)不正請求事件で不正請求を黙認した疑いが持たれている損保ジャパンが調査のため社外弁護士を中心とする社外調査委員会を設置したと言う報道です。この報道に関するヤフコメを見ると、“関係がある弁護士を集めて穏便な報告に仕上げる狙いが見え見え”というコメントが多数見られます。もっともな見方なので私も委員長となる弁護士の人選に注目していました。報道によると山口幹生弁護士が委員長に就任しています。山口弁護士について調べてみると
1987年 早稲田大学法学部 卒業
1988年 司法修習(~1989年)
1989年 検事任官、東京地方検察庁
以後横浜地検、東京地検など表街道勤務が多い
2013年 広島地方検察庁次席検事を最後に検事退官
2014年 弁護士登録、大江橋法律事務所 入所
2023年3月 弁護士法人 瓜生・糸賀法律事務所 入所
となっています。
山口弁護士の注目点は公認不正検査士の資格を持っていることです。
「公認不正検査士(Certified Fraud Examiner、CFE)とは、不正対策に重要な4つの分野(会計知識、法律知識、犯罪心理学、調査手法)の試験に合格し、かつ米国公認不正検査士協会(The Association of Certified Fraud Examiners 略称:ACFE)の認定によって与えられる資格」(Wikipedia)で、銀行や保険会社で重宝される資格のようです。検事の経歴とこの資格を考えれば悪くない人選のように思われます。
問題は損保ジャパンとの関係です。今年2月まで在籍した大江橋法律事務所は保険関係の案件を多数取り扱っており、そちらで関係があった可能性があります。BM不正請求問題については、2022年に損保ジャパンが公式に調査したことになっていますので、山口弁護士はそのときに関与している可能性があります。
それと瓜生・糸賀弁護士事務所との関係ではちょっと気になることが見つかりました。それは元金融庁長官(2018~2020年)で東京海上日動の顧問を務める遠藤俊英氏が瓜生・糸賀法律事務所の顧問を務めていることです。以下にWikipediaから遠藤氏の経歴の一部を引用します。
2018年(平成30年)7月 金融庁長官
2020年(令和2年)7月 金融庁長官退任
2020年(令和2年)11月 ソニー シニアアドバイザー、富国生命 顧問[16]
2020年(令和2年)11月 リッキービジネスソリューション株式会社 顧問、ジンテック 顧問、トパーズアドバイザリー 顧問[17]
2021年(令和3年)1月 東京海上日動火災保険 顧問[18]。
2021年(令和3年)3月 ディーカレット 特別顧問[19]、弁護士法人瓜生・糸 賀法律事務所 顧問、タイグロンパートナーズ 顧問[18]
2021年(令和3年)5月 KPMG税理士法人 特別顧問[20]
2021年(令和3年)10月 justInCase アドバイザリーボードメンバー[21]
2023年(令和5年)6月 ソニーフィナンシャルグループ代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)[2]、ソニーフィナンシャルベンチャーズ代表取締役社長、ソニー銀行取締役、ソニー損害保険取締役、ソニー・ライフケア取締役[12]
これを見ると遠藤氏は2021年1月に東京海上日動の顧問に就任した2カ月後の3月に瓜生・糸賀法律事務所の顧問に就任していますので、東京海上日動の紹介のように思われます。これが正しいとすれば、瓜生・糸賀法律事務所は損保業界と相当付き合いが深いと考えられます。
遠藤氏は金融庁長官退任後監督先だったいくつかの金融機関の顧問に就任し、この6月にはソニーファイナンシャルグルーブの代表取締役社長に就任しています。これまで金融庁幹部が金融機関に天下るケースは殆どなかったことを考えると異常であり、注目して調べたものです。これを見ると山口弁護士の損保ジャパン社外調査委員会委員長就任には遠藤氏、ひいては金融庁が関わっている印象があります(山口弁護士が今年3月大江橋法律事務所から瓜生・糸賀法律事務所に移籍しているのも不自然)。
関西電力は原発立地町の元助役から役職員が金品や商品などを受取っていた不祥事を調査するため第三者委員会を設置し、委員長には元検事総長の但木敬一氏を指名し、委員は元第一東京弁護士会会長や元東京地方裁判所所長とし、外部から見ても高い独立性が感じられました。それと比べると損保ジャパンの社外調査委員会には、独立性に疑念を持たざるを得ません。第三者委員会とせず社外調査委員会としているのは、従業員以外のメンバーで構成した調査委員会という意味なのかも知れません。
私が予想する社外調査委員会の報告要旨は、
「BMは損保ジャパン内で旧日本興和損保グループの重要取引先であり、出向者から担当役員まで旧日本興和損保G出身者で固められ、社長以下グループ外の者は取引に関与できない状態だった。即ち損保ジャパンがBMの不正を止められなかったのは旧日本興和損保Gの暴走が原因であり、関係者の厳正な処分が望まれる。」
これに基づき損保ジャパン主流派は堂々と邪魔な旧日本興和損保G出身者をパージすることになります。この報告書については、山口弁護士が属する瓜生・糸賀法律事務所顧問である遠藤元金融庁長官が目を通し、金融庁の処分と整合性がとれるよう金融庁と調整するものと思われます。こういうことが想定される損保ジャパンらしい社外調査委員会のようの思われます。