BM=チンピラ・損保ジャパン=越後屋・金融庁=悪代官の構図
ビッグモーター(BM)が事故車の修理代を水増しして保険金請求していた問題で金融庁がやっと重い腰を上げました。7月31日にBMと代理店契約を結んでいた損保7社に報告徴求命令を出し、8月2日には損保ジャパンに対して、BMに認めていた簡易査定についての報告徴求命令を出したという報道です。この報道に接して思うことは
1.遅過ぎる。
この問題は2021年秋に報道されており、2022年2月にはサンプル調査で損保も事実関係を把握していました。従って2021年または2022年には動くべきでした。
2.報告を求めるのではなく、自ら調査に入る必要がある。
報告徴求命令という偉そうな命令を出すよりも自ら調査に入った方が事実を解明できます。犯罪行為(詐欺)をした者が作成した報告書など信頼できるはずがありません。自ら乗り込んで出向者や担当者を審問し、証票で確認しないと本当のことは分かりません。
金融庁のこれらの動きは、7月になって本件が大々的に報道されてから損保ジャパンがとった対応とそっくりです。損保ジャパンは7月28日にBMと代理店契約の解消し損害賠償を請求すると発表しています。多くの出向者を出し、早くから本件不正請求を知っていたと思われる損保ジャパンのこの行為は掌返しであり、ヤフコメを見ると被害者偽装との声が圧倒的です。
最近の金融庁の態度は、この損保ジャパンの態度と重なります。金融庁は損保ジャパンがBMと組んで不正な保険金支払いをしていたことを薄々承知しながら黙認していた疑いがあります。金融庁は定期的に損保の検査を行っており、2021年にBM問題が報道されてからも検査を行っていると思われます。その場合BM問題について重点的に検査するのが当然です。しかし金融庁が問題にした様子はなく、金融庁は検査しなかったか“めこぼし”をしたと考えられます。
私がなぜこうも金融庁を疑うかというと最近金融庁長官経験者が相次いで監督先である金融機関に天下っているからです。2017年には2004~2007年に長官を務めた五味廣文氏がSBIホールディング(住信SBIネット銀行、SBI証券を傘下に持つ)の社外取締役に就任し、2022年2月に新生銀行会長に就任しています。五味氏の場合には長官退任後10年経過していることがいい訳になるかも知れませんが、2018~2020年に長官を務めた遠藤俊英氏は長官退任4カ月後の2020年11月には富国生命顧問に就任、翌年1月には東京海上日動の顧問に就任し、更に今年6月にはソニーフィナンシャルグループ(傘下にソニー銀行、ソニー生命、ソニー損保を持つ)社長に就任しています。それまで金融庁長官経験者は監督先の金融機関には天下っておらず、これが金融庁職員が監督先の金融機関に天下ることを抑制していたと考えられます。ところが2人の長官経験者が監督先に天下ったことからこの抑制が解かれ、天下り競争が始まっていると思われます。損保ジャパンにも金融庁幹部や職員が数名天下っていると思って間違いないと思われます。こうなると損保ジャパンへの検査は形骸化し、検査する職員は損保ジャパンに金融庁退職後呼んでもらえるよう検査に手心を加える、目こぼしするようになり、検査が天下りの営業活動化します。このような金融庁の変質が、BM事件がここまで拡大した真の原因のように思われます。
江戸時代の時代劇では、越後屋という悪徳商人が監督する立場の悪代官に賄賂を贈り、そこで悪代官が越後屋に「おぬしも悪よのう」と言う定番場面がありますが、BM事件では、BMが越後屋傘下のチンピラ、損保ジャパンが越後屋、金融庁が悪代官の構図です。賄賂は金融庁からの天下り受け入れ人数の増加となります。金融庁もこのように見られていることに気付き、8月4日には長官がマスコミの取材に応じ、この見方を変えようとしています。金融庁から損保への天下りを無くさない限り、本件のような保険不正および損保の不正は無くなりません。