SONPOケア賃上げの原資は損保ジャパンの保険料収入

損保ジャパン傘下で介護サービスを手掛けるSONPOケアが10月から介護職員の給与を引き上げるという報道です。以下朝日新聞電子版を引用します。

「SOMPOホールディングス傘下の介護事業大手、SOMPOケアは、介護現場で働く正社員約7千人の給与を10月に引き上げることを決めた。鷲見隆充・社長COO(最高執行責任者)が朝日新聞のインタビューで明らかにした。 介護福祉士の資格を持つ社員約4500人とケアマネジャー約900人の年収を約6万円、資格のない社員約1600人の年収も約12万円、それぞれ引き上げる。全正社員約1万2千人の半数強が賃上げの対象になる。同社は2019年10月、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、在宅サービスなどの介護現場で「ケアコンダクター」と呼ばれるリーダー層の職員の年収を約30万円、介護福祉士の資格を持つ社員らの年収を約20万円引き上げる賃上げを実施。昨年4月には、上席ホーム長やホーム長など管理職の年収を約55万円、ケアコンダクターの年収を約50万円、それぞれ引き上げた。3度目の処遇改善となる今回は、主に幹部社員を対象にした過去2回の賃上げと違い、入社1~2年目の社員など介護の経験が浅い一般社員の処遇改善に踏み切る。3度の処遇改善で、ほぼ全ての正社員が一度は賃上げの対象になる。」

介護の仕事は大変な仕事でありながら低賃金(損保ジャパンの3分の1以下のレベル)となっており、賃上げ自体は良いことだと思います。この報道を見て私が気になったのは賃上げの原資です。これについては、報道では何も触れられていません。介護サービスの収入は介護保険と自己負担分であり、報道のような賃上げを行うためには自己負担を引き上げる(サービス料の値上げ)しかないことになります。しかしSONPOケアのHPを見てもそのような告示はないし、賃上げの原資はサービス料の値上げではなさそうです。

では何か?損保ジャパングループ(G)の利益だと思われます。損保ジャパンGの事業は損害保険が主力であり、それに生命保険が少し貢献し始めた段階だと思われます。そうなると損害保険事業の利益がSONPOケアの賃上げ原資に充てられると考えられます。損保ジャパンGが稼いだ利益を何に使おうが自由ですが、保険は本来相互扶助事業であり、利益が上がれば保険料に還元していくのが筋です。従って損保ジャパンがSONPOケアの賃上げに使う利益は本来保険料の引き下げに充てられるべきものであり、これをSONPOケアの賃上げに使うと言うことは、その分保険契約者が高い保険料を払わされるということになります。これについては、厚生労働省は大歓迎で、多くの生損保も介護サービス事業を行い、損保ジャパンのやり方に倣うよう期待することになります。そうなると他の介護サービス事業者は太刀打ちできなくなります。SONPOケアの賃上げ報道はこういう問題を孕んでいると言う視点も必要です。