公務員の所得は国民所得・県民所得に連動すべき

人事院は8月7日、国会と内閣に2023年度の国家公務員一般職の待遇に関する勧告を提出しました。月給を平均3,869円、ボーナスを0.1カ月分それぞれ上げるよう勧告し、その結果年間給与は平均で3.3%増え、ボーナスの年間支給額は4.5カ月分になるということです。民間企業で賃上げが続いたのを踏まえ、官民の給与水準の格差を解消することを理由にしています。

この勧告は国家公務員の一般職およそ28万人を対象としますが、地方公務員280万人の給与も勧告に準じて原則変更となっています。この結果国家公務員で1,720億円ほど、地方公務員で国の補助金を除くと2,870億円ほどの予算が必要となるということです。

人事院の勧告を見ていつも思うことですが、給与引き上げの原資については一切触れられていません。これでは家庭の収入を考えず小遣い上げてと言う子供と同じです。給与引き上げを言うのなら財源について触れるのが大人の社会の常識です。特に川本人事院総裁は金融業界出身の方ですから、この常識は良くご存じのことと思います。郷に入れば郷に従えで、人事院総裁になったら「そんなこと知ったことか」ということでしょうか。

財源は無くても給与を引き上げるのなら、公務員以下の給与に留まる民間人へも税金で足りない分を補填すべきだと思われます。税金は彼らからも徴収しており、彼らは所属する企業で財源がないために低い給与に甘んじています。公務員の給与の引き上げ原資が税収の増加であるなら納得できますが、そうでなく赤字国債や他の支出を減らした分と言うのなら、これらの民間人に対しても同じ対応を行うべきことになります。

特に地方公務員の給与はラスパイレス指数を参考に国家公務員に準じる取扱いになっており、この結果地方公務員の給与水準は最低でも国家公務員の95%以上となっています(夕張など特殊要因がある自治体は除く)。一方地方自治体間の1人当たり所得格差は最大2倍以上あることから、税収はそれ以上の格差があり、地方の税収ではこの給与は負担できません。そのため地方公務員の給与水準を国家公務員並みに揃えるための原資の多くは、国からの交付金が充てられていることになります。この事実からも公務員以下の給与に甘んじる地方の民間人の給与も税金で補填すべきと言うことになります。それでは税収がいくらあっても足りないと言うのなら、国家公務員の給与は国民1人当たり所得(約300万円)、地方公務員の給与は都道府県民あるいは地方自治体の所得に連動すべきと言うことになります。この結果東京都職員と鹿児島や宮崎県の職員の給与格差は2:1程度になります。こうなれば地方において公務員と住民の所得が余りにも違い過ぎる(公務員が圧倒的に高い)という現象はなくなります。例えば県職員も県民所得を上げないと自分の所得も上がらないことから、県民の所得を上げる政策を懸命にやることになります。こうしない限り公務員が住民の所得の向上を考えることはありません。