sonpoホールディングの社外取締役はお飾り?
ビッグモーターの保険金不正請求事件で損保ジャパンの悪質さが際立っています。37名の出向者を出し、そのうち1名は不正の舞台となった板金・塗装部門の担当部長を務めていました。また不正の疑いが濃くなった2022年7月には、「不正は無かった」と強弁し事故車修理紹介を再開しています。これを見ると損保ジャパンは被害者ではなく共犯と言えると思われます。
損保ジャパンとしてはあくまで被害者の立場で、8月初めに社外弁護士による調査委員会を立ち上げましたが、8月7日持ち株会社のsonpoホールディングが調査委員会を引き取り傘下に置くと発表しました。私は損保ジャパンが持ち株会社を設立していたとは知らなかったので、sonpoホールディングについて調べてみました。sonpoホールディンの代表取締役社長は桜田謙悟氏です。桜田氏は2012年に損保ジャパンの代表取締役社長に就任しました。2019年4月に経済同友会代表幹事に就任したこともあってか、同年6月に損保ジャパンの社長を退任し現在の地位に就いています。名実ともにsonpoグループのドンと言ってよいと思われます。
sonpoホールディングの経営陣を見て驚くことは、全取締役12名中9人を社外取締役が占めることです。東証では3分の1以上を社外取締役にするよう求めていますから、異常に多いと言えます。桜田氏が経営の透明性に自信を持っていることが伺えます。そこで気になるのが損保ジャパンの不正との関係です。ビッグモーター事件は2021年秋頃から報道されており、2022年2月には取引先損保がサンプル調査を実施していますから、この情報はsonpoホールディングの取締役の耳にも入っていたと思われます。少なくとも桜田氏は損保ジャパンの取締役も兼ねていますから、確実に知っていたはずです。持ち株会社の取締役は傘下の事業会社の業務状況について細かく知る必要はありませんが、グループ経営に深刻なダメージを与えることになると思われる事項については調査報告を求める責務があります(取締役の善管注意義務)。ビッグモーター事件は明らかにこれに該当するものであり、sonpoホールディングの取締役としては損保ジャパンに調査報告を求め議論していないとおかしいです。今回損保ジャパンが設置した社外調査員会は、本来最初からsonpoホールディングが設置すべきものであり、これが前後したということは、sonpoホールディングは何もしてこなかったことが伺えます。
これが事実とすれば、全取締役12名中9名が社外取締役という形態が機能不全に陥っていることになります。その原因としては社外取締役と言いながら桜田社長の友人知人で占められており、取締役会が懇親会化していることが考えられます。最近東証が女性役員を増やすよう要請していることもあり、今年スズキがシドニーオリンピックマラソン金メダリストの高橋尚子さんを、四国電工が元フジテレビアナウンサーの中野美奈子さんを社外取締役にするなど取締役としての基礎的素養(決算書が読める、会社法ぐらい知っているなど)がない素人を社外取締役とするなど、取締役会が形骸化する傾向が見られます。こんなことが出来るのは社長権限が強い会社であり、言うなれば社長独裁会社です。Sonpoホールディングは、形式上は取締役の素養を有するメンバーで構成されていますが、桜田社長と各社外取締役の個人的関係が求められる機能を発揮できない原因になっているように思われます。損保ジャパンの不祥事の原因とともにsonpoホールディングの社外取締役が機能しなかった原因についてもメスを入れる(第三者委員会で検討する)必要があるように思われます。