銀行員の採用も理系が多数派になる

8月14日の日経電子版に、

「三井住友信託銀行は正社員の7割にあたる6,500人を、システム導入などを指揮できるDX(デジタルトランスフォーメーション)人材に育てる。リスキリング(学び直し)に3年で30億円を投じ、新たなサービスの開発や業務の効率化につなげる。フィンテックとの競争が激しくなり、リスキリングの巧拙がデジタル時代の浮沈を左右する。」

との記事がありました。以前家具のニトリも2025年までに約1万8,000人の従業員のうち80%にあたる約1万4,000人に対し、国家資格「ITパスポート」を取得させる計画と報道されました。ニトリがITパスポート資格ですから三井住友信託銀行はこの上の資格である「基本情報技術者」の取得を目指させるものと思われます。ニトリのように店舗の販売員がITパスポート試験に合格するのも簡単ではありませんが、銀行員が基本情報技術者試験に合格するのも簡単ではありません。多分中小企業診断士試験に合格するくらいの勉強量が必要になると思われます。三井住友信託銀行は年間10億円の費用を負担するとのことですから、行内で終業後試験対策講座を開講するか、IT資格専門学校のネット受講料を負担するのではないでしょうか。行員にとっては、会計知識や法律知識とは全く異なった分野となるため大きな負担がかかってきます。それと受験料を銀行が負担する結果、受験の結果を銀行が知るところとなり、なかなか合格できない人にとってはプレッシャーがかかることになります。従って三井住友信託銀行に就職したい学生さんは、在学中に基本情報技術者の資格を取得しておいた方が良いかも知れません(就職もしやすくなる)。

一方基本情報技術者の資格をとったくらいではシステム導入を指揮できるDX人材にはなりません。私も今年5月この資格を取得しましたので分かります。この上の資格(応用情報技術者)をとっても無理です。それはこのような人材になるためにはIT部門での実務経験が不可欠だからです。中小企業診断士の資格は持っていても中小企業の経営を改善できないのと同じです。システムエラーやPCの操作不能などで情報システム部への問い合わせは減ると思われます。効果はその程度と考えておいた方が良いと思われます。

本当に全行員の7割くらいをDX人材にしたいのなら、情報処理関係の学生を採用することです。これまでのように法学部や経済学部の学生では無理だと思われます。もう銀行も理系人材が中心となる時代に入ったように思われます。