「白川を差し出して桜田を守れ」の損保ジャパン
ビッグモーター(BM)の保険金不正請求問題で金融庁から報告徴求命令を受けていた損害保険7社が提出期限の31日に報告書を提出したという報道です。これから金融庁が報告書を精査し、BMと関係が深った損保ジャパンに立ち入り検査することになると思われます。損保ジャパンの持ち株会社SOMPOホールディングスは8月28日、社外調査委員会の中間報告の結果を9月末までに記者会見して報告すると発表していますが、これは金融庁の立ち入り検査終了後でないと記者会見できないという背景からです。
SOMPOホールディングスの上記発表後、不思議な現象が見られます。それは白川社長を悪者に仕立て上げる報道が相次いでいることです。例えば8月30日には、BMとの取引再開を協議した昨年7月の損保ジャパン役員会の数日前に、白川社長は不正を否定したBMの自主調査結果は同社に都合よく改ざんされたものだと部下から報告を受けており、役員会では「事実関係としてはクロ(不正)が推認される」と発言した上で、いったん中止した取引の再開を促す発言をしたという報道が一斉になされました。これから分かることは、8月28日までに社外調査委員会の中間報告が損保ホールディングスおよび損保ジャパンの役員会であったと言うことです。この報告の中に上記リーク報道が含まれていたと考えられます。そうだとすればリークしたのは損保ホールディングスの役員と考えられます。損保ジャパンの役員は承認した責任がありますから、こんなリークは出来ません。損保ホールディングスは12人の役員中9人が社外取締役会ですから、社外取締役がリークした可能性が高いと思われます。BM問題は2021年秋から報道されており、損保ホールディングスの役員としてはグループ事業に重大な影響を与える問題として損保ジャパンに調査報告を求める必要がありました。しかし社外調査委員会を設置した(損保ジャパンから移管した)のは8月7日ですので、損保ホールディングはそれまで何もしてこなかったことが伺えます。
社外調査委員会の中間報告を受けて白川社長1人を悪者とするリーク報道が始まっており、これにはある意図があると考えざるを得ません。それは白川社長に全責任を負わせることで、損保ジャパングループの最高実力者である桜田ホールディングス会長(CEO)を守ることです。桜田会長は経済同友会代表幹事まで務めた名実ともに損保グループの最高実力者です。今の白川社長は2021年に37人抜きで社長に就任していますが、これは桜田会長の指名と考えられます。桜田会長抜きにこういうドラスティックな人事はできません。
では桜田会長は独裁者かというとそうではないようです。自身は2012年に56歳で損保ジャパンの社長に就任し、2014年には会長、2016年には会長を退任していますから、権力に執着している様子はありません(ただしその後損保ホールディングス社長、会長に就任しているので、最高権力は掌握している)。損保ジャパンは桜田会長の出身大学である早大閥と言われますが、白川社長は立命館大学卒であり、同時期に損保ホールディングス社長に就任した奥村氏は筑波大学卒ですから、学閥人事もしていません。これを見る限り桜田会長はそんなに悪いリーダーには見えません。
報道を見る限り「白川を差し出して桜田を守れ」のように見えますが、本当のところは9月中に開かれる予定の桜田会長が出席する記者会見で明らかになると思われます(記者会見のポイントは桜田会長が辞任を表明するかどうか)。