ゼロゼロ融資の実体は事業給付金、返済免除が妥当
ゼロゼロ融資の返済が本格化し、返済できずに倒産する企業(および個人事業主)が増加しているという報道です。
ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組みで、2020年3月から日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関で始まり、利用が増えたことから2020年5月からは民間金融機関も融資できるようになりました。その後民間金融機関は2021年3月で終了し、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫は2022年末で終了しています。
融資を受けた企業は融資から最初の3年間、利子補給によって利払いが実質免除されるのに加え、最長5年まで元金の返済も猶予されます。2022年9月末までに、個人事業主を含む全国の企業に総額43兆円もの融資が実行されています。大半が実質無利子の条件を満たした「ゼロゼロ融資」で、2023年7月~2024年4月に返済開始が集中する見込みのようです。大企業は業績回復も急激であり返済は問題ないと思われますが、中小企業や個人事業主は回復しても事業継続がやっとであり、利払いや返済は困難なケースが多いことは容易に想像できます。これが現在倒産が増加し、今後も増加が見込まれる原因です。
これに対して政府が打ち出すべき政策は、融資が始まった背景を考えれば明らかです。それは融資の返済免除です。ゼロゼロ融資が始まって間もなくして国民1人当たり10万円、総額12兆円の給付金の支給が決まりましたが、ゼロゼロ融資はコロナによる事業収入不足を補填するものであり、実質的には給付金と同じ性格です。従って融資ではなく給付金の形をとっていてもおかしくなかったと思われます。ただし大企業や中堅企業の場合コロナから回復すれば十分な返済力があることところも多いことから、給付金ではなく融資の形をとったと考えられます。従って融資の時点で返済できない企業や個人があることは想定されていました。これが今後集中することになります。この対策としては、ゼロゼロ融資が実行された背景に鑑み、事業実態から見て返済不能と判断される企業および個人事業主へのゼロゼロ融資は返済免除にするのが妥当です。融資した日本政策金融公庫や商工組合中央金庫および民間銀行が免除を申請する企業や個人事業主の売上や資金繰りの状況を見て幅広に免除します。融資原資が日銀貸付なら日銀が返済を免除すればよいし、保証協会の代位弁済なら保証協会が債権放棄すれば済みます。このまま返済猶予を続けるのはバルブ崩壊後の不良債権処理の遅延と同じであり、経済の再始動が遅れてしまいます。今ある中小企業や事業主と同じ数の中小企業や事業主を作るには大変な時間とコストが必要であり、融資を免除して生かした方が日本経済にとって得です。
従って返済不可能と思われるゼロゼロ融資はなるべく早く返済免除の措置をとる必要があります。