熊本は「セントラル九州」になる設計図が必要
10月13日の共同通信によると、政府はTSMCが熊本に第2工場を建設するに当たり9,000億円の助成金を支給する方向で予算化するとのことです。予算が承認されれば第2工場建設が正式決定になると思われます。第2工場の建設総額は約2兆円で、6nm線幅の半導体を製造すると言われています。第1工場が12nm線幅まで言われていますので更に進んだ工場であり、最先端に近くなります。北海道に工場を作る計画のラピダスが2nmという最先端工場を目指していますので、TSMC熊本第2工場はその間を埋める製品となります。2nm半導体はまだ製造方法が確立しておらず、ユーザーも見えないことからラピダスの事業は紆余曲折が予想されます。その点6nm半導体は製造方法が確立し、ユーザーも存在することから事業として成り立ちます。地域にとってはラピダスの先端工場よりTSMC熊本第2工場が歓迎されます。
これが決まると数年後熊本にはTSMC第1工場と第2工場、ソニーのCMOSセンサー第1工場と第2工場があることにあり、一大半導体生産地帯となります。その他に三菱電機も菊池に1,000億円をかけてパワー半導体工場を新設する計画ですし、熊本市にはルネサスの半導体工場があります。かっても熊本は日本における半導体の一大生産地でしたが、今回は世界的生産地に変貌しようとしています。今後もTSMCやソニーの工場増設が期待できますし、半導体装置産業の集積も期待できます。もともと半導体装置の世界的企業である東京エレクロトンは熊本に工場を集積する計画でしたが、熊本地震により計画を変更し岩手に集積を図っています。またSCREENも同様な計画を持っていましたがやはり熊本地震が原因で中止しました。東京エレクトロンはソニーのCMOSセンサー工場向けに合志市に工場を持っていますが、こうも熊本に半導体工場が集積すると再度熊本に工場を集積することが考えられます(SREENも同じ)。従って今後は半導体装置産業や必要部材産業の工場が集積して来るのは間違いありません。
そうなると熊本の様相は一変します。これまで南九州に分類され、貧乏県・後進県扱いされてきましたが、これからは南九州の範疇を抜け出し、県民1人当たり所得では福岡県に迫ってくると思われます(県民1人当たり所得で九州トップである福岡県でも全国では30位くらい)。
これまで将来道州制になったとき熊本が九州の州都になると言うと九州の他県人から笑われましたが、これからは夢ではなくなると思われます。それはひとえに今後の半導体産業の集積に掛かっており、熊本県としては半導体産業にとって魅力的なインフラを整備する必要があります。それは農地の工場転用の容易さであり、交通網の整備であり、工業用水および処理場の整備などとなります。それに加え半導体産業に必要な要員の育成も重要になりますし、半導体技術者の多くが他県又は他国から移り住むことになりますから、子供の学習環境の向上も重要となります。特に全国学力テストで30位台と考えられる公立学校教育は移住者を不安にするものであり、改善が急がれます。
今後熊本は「セントラル九州」(九州の中心)を標榜して、その実現のための設計図を作成する必要がありあます。