岸田首相の減税案は国民を馬鹿にし過ぎ
岸田首相が1人あたり4万円の減税を行うと言い始めました。年収に関係ない一律減税を考えているようです。
その理由として岸田首相は、過去2年間で所得税、個人住民税の税収が3.5兆円増加したこと、国民負担率の高まりが続いてきたことを上げ、税収増を納税者にわかりやすく直接還元するのが良いと判断した、と説明しています。
岸田首相の案では、扶養家族も減税対象になる見通しで、納税者が家族2人を養う3人世帯の場合は合計で12万円分の減税になるとのことです。
更に減税対象にならない住民税非課税世帯向けには、1世帯あたり7万円を給付すると表明しました。その理由として「物価高に最も切実に苦しんでいるのは低所得者の方々だ」と述べています。加えて所得税が非課税の子育て世帯には別の給付も設ける見通しのようです。
この結果、減税と給付で総額5兆円規模の財源が必要になる見込みだということです。
ここで気になるのがなぜ急に岸田首相がこういうことを言いだしたかということです。税収増を納税者に還元すると言っていますが、国の財政は慢性的な税収不足です。予算の約4割は赤字国債であり、財務省はこのままでは国の財政は破綻すると言っています。ならば増収増加分は国債の償還や発行国債の圧縮に充てるのが筋のように考えられます。物価高に苦しむ国民の救済も理由としていますが、今回の減税は今回1回だけの措置と言っており、本質的解決にはなりません。また防衛増税は実施すると言っていますし、「異次元のこども対策」で3兆円以上の財源が必要なことも分かっています。これらの岸田首相が打ち出した政策によれば新たに少なくとも5兆円の増税が必要となります。
このことを考えると岸田首相が言い出した減税および給付には裏があると考えざるを得ません。それは総選挙対策です。岸田政権も2年が過ぎ、来年9月または10月には自民党総裁選挙があります。岸田首相としてはその前に解散総選挙を行い、選挙に勝利して首相を続けたいところです。減税を来年6月に実施し、これで有権者の支持を得て、7月に解散総選挙を行うことを考えているのかも知れません。
しかしこの岸田首相の目論見は成就しそうにありません。それは、国民はこの岸田首相の目論見をお見通しであり、増税間違いない自民党を勝たせないからです。岸田首相になって賃上げが進んだことは事実ですが、これ以上に物価が上がっており、生活が苦しくなった国民が多数派です。これは4万円の減税や7万円の給付で解決しないのは誰が見ても明きらかです。これで選挙で投票してもらえると考える方がおかしいです。
岸田首相がこうも焦るのは岸田政権の支持率が低迷しているためだと思われます。低迷の原因が分かれば、今回の減税策や給付策は解決にならないことが分かります。岸田政権の支持率が低迷している原因は2つあります。1つは岸田首相の度重なる縁故人事で岸田首相の人品が卑しいことが分かったことです。代表的な人事が翔太郎秘書官人事であり、堀内詔子ワクチン接種担当大臣(加藤紘一グループにいた岸田氏を宏池会に呼び戻してくれた堀内光雄宏池会会長の息子の嫁であり、息子は岸田首相と同じ長銀にいた)、加藤鮎子こども対策大臣(一時首相に担いだ加藤紘一議員の愛娘)です。国民は首相に滅私奉公を望んであり、岸田首相が息子の翔太郎氏を首相秘書官にした時点で「この人は首相の器ではないかも」という疑念を持ちました。そして翔太郎秘書官の度重なる不祥事で疑念は確信に変わりました。この時点で岸田首相は国民の信認を失ったと言ってよいと思われます。2つ目は増税政策です。防衛費の一部を増税で賄う方針はずっと言っていますし、「異次元のこども対策」に要する費用については増税で賄うと言っていませんが、増税で賄うしかないことは国民が一番良く知っています。そのため国民は、岸田首相で5兆円から10兆円の増税が必要になったと考えています。こんな首相を支持できるはずがありません。
このような岸田首相支持率低迷の原因が分かれば、岸田首相が何をやっても支持率が回復することはないことが分かります。ちょっとした減税で支持率を回復できると考える岸田首相は国民を馬鹿にし過ぎです。