肥薩線復旧は新知事で中止になる
肥薩線復旧問題が場外乱闘の様相を呈してきました。熊本県が関係市町村の復旧費負担を0とし、かつ復旧後の運営維持費(赤字)の負担も5,000万円に留めるという考えられない譲歩をしてまとめましたが、今後の鍵を握るJR九州の古宮社長が冷や水をぶっかけました。11月30日の記者会見で、肥薩線復旧に関して熊本県側の対応がまとまったことを受けJR九州の姿勢を問われた古宮社長は、「国の金を200億使って乗客が毎日ウン十人しか乗りませんでしたというのが本当にいいのか。我々は持続可能性、肥薩線を今後どうしていくのかというのが必要じゃないですか」と発言しました。これがJR九州が肥薩線復旧を受け入れる条件だとすれば、クリアするのはほぼ不可能です。
ネットではこの発言が話題を呼んでいます。肥薩線復旧問題の核心を国や県と連携していると思われたJR九州の社長がズバリ指摘したからです。この部分をとらえて「JR九州は肥薩線復旧に応じないことに決めている」と結論付ける声もあります。実際この発言から受け入れに転ずることは想定できません。
ただしJR九州がここまで言うのはおかしいことでもあります。それは熊本県側がまとめた費用負担案はJR九州が試算したものであり、JR九州にはこの試算通りになるのなら負担を受け入れるとの意思があると考えるのが相当だからです。熊本県側には、古宮社長の発言はちゃぶ台返しと映ったと思われます。
この結果熊本県側とJR九州の交渉は難しいものとなるのは必然です。それに熊本県側としては蒲島知事の任期が来年4月15日に迫っているという事情が加わります。というより熊本県側が関係市町村に考えられない譲歩をして合意を取り付けたのは、この問題があるからです。蒲島知事は川辺川ダム建設中止という重大な判断ミスにより人吉球磨地方の人たちに多大な人的物的損害を与えており、肥薩線復旧はそれに対する蒲島知事の贖罪(お詫び)であることから、何としても任意期中に決着させたいものと思われます。JR九州としてもこのことは十分承知していますから、蒲島知事任期中は話を進めず新知事の就任を待つ戦略をとると思われます。理由としては、物価や人件費の高騰により当初の復旧費試算をやり直す必要があるということになります。やり直せば復旧費総額は約235億円から1.5倍の約350億円程度に跳ね上がることが予想されますので、熊本県としても負担額の見直しが必要となり、蒲島知事の任期中の決着は不可能となります。
新知事になれば蒲島知事のような人吉球磨地方への負い目もなくなり、冷静に判断できるようになります。そうなればJR九州の古宮社長の発言のように考えるのが普通です。その結果肥薩線復旧は中止となり、JR九州が考えるBRTに向かうと考えられます。