生命保険料控除拡大は子育て世帯を苦しめる政策

自民党が来年度の税制改正で、こども政策として生命保険料控除の拡大を計画しているという報道です。しかしこれにはネット上多くの疑問が寄せられています。生命保険料控除は支払った保険料の一部を課税所得から控除するものであり、支払保険料よりはるかに少額です。生命保険料控除拡大の趣旨は子育て世帯で世帯主が万一亡くなった場合でも子供の養育費用を確保できるようにすることにあるようですが、子育て世帯は子育てにお金がかかり日々の生活費に余裕がありません。そんな中で万一の出来事に備えるために生命保険に加入させる、または保険金額を大きくさせるというのは、支援策とは言えません。

生命保険料控除拡大は、保険会社が保険料収入を増やすために毎年税制改正に当たり自民党に要望している項目です。保険の営業ではこれが1つのセールストークになっています。生命保険料控除の拡大は金融庁が提案したというんことですから、生命保険会社の要望を受け、こども政策にかこつけたのは明確です。以前自民党の森まさこ議員がブライダル業界への補助金をこども政策として提案しネットで激しい批判を浴びましたが、金融庁の提案はこれと同じ類です。金融庁としては、人口減少により保険件数や金額が減少している生命保険業界を支援するために、生命保険料控除拡大を岸田政権が重要政策に掲げているこども政策に潜り込ませようとしたものと考えられます。

金融庁所管の損保業界ではビッグモーター事件を始めとして、カルテル事件などの不正が相次いでいますが、生命保険業界でも営業員の使い込みなどの事件が後を絶ちません。これは金融庁が天下りに備えて検査に手心を加えているからと考えられます。検査が天下りの営業となっているのです。それは2020年7月まで金融庁長官を詰めた遠藤英俊氏が退官後数か月で監督先金融機関の顧問に就任し、2023年6月にはソニーフィナンシャルグループ(監督先の銀行や生保、損保子会社を傘下に持つ)社長に就任していることからも分かります。このように金融庁が損保や生保の利益代表として、自民党にロビー活動をしていることが分かります。

子育て世帯の世帯主が亡くなった場合の子育てを考えるのなら、子供が22歳になるまで政府が子育て費用として毎月10万円支給した方が安上りです。これを生命保険で行えば子育て世帯は年間数千億円の保険料を支払うことになりますが、政府が支給すればこの保険料の支払いがなくなり、子育て世帯への大きな支援になることは明らかです(支援額も数百億円)。こども政策にかこつけて生保の収入拡大を支援する自民党はもう終わっていると思います。