福岡市人口170万人の背景に九州貧困7県の存在

福岡市(福岡)の人口は2040年に170万人に達するという予想が発表されました。今年11月末の人口は164万4000人で、昨年1年間の人口増加数は13,131人ですから、まず間違いないと思われます。人口増加の大部分が九州各県から流入です。とりわけ高校を卒業して大学や専門学校に行くために来る人が多いようです。東京に行く場合上京と言いますが、福岡に行く場合上福とは言いません。それは九州各県が福岡と2,3時間で結ばれており、遠くに行くという感覚がないためのように思われます。

人口減少時代に入った日本で人口が大きく増えているのは東京、大阪の大都市と福岡くらいです。この3都市の中でも福岡の人口増加は15~29歳の若者中心であるところに特徴があります。そのため町が若々しくエネルギーに満ち溢れているのです。地方の中心都市という意味では札幌や仙台が似ています。札幌は人口約190万人と福岡の上を行きます。たぶん今の福岡は20年前の札幌の状態ではないかと思われます。札幌は今後人口減少に転じるとの予想です。仙台はトヨタの工場や台湾の半導体工場の進出により、東北4県(福島、秋田、岩手、青森)から労働人口を集めるとともに、東北の中心都市として福岡と似た発展を遂げる可能性があります。

日本の多くの政令指定都市が羨む福岡の存在には、残念ながら九州7県の貧困があります。1人当たり県民所得(2020年)を見ると福岡県35位(2,630千円)、大分県36位、佐賀県38位、熊本県40位、長崎県42位、鹿児島県44位、宮崎県46位(2,432千円)と軒並み下位に位置しています。また2023年の最低賃金を見ると福岡県が19位(941円)とまあまあな位置にありますが、あとは佐賀県32位(900円)、大分県36位、長崎県・熊本県37位、宮崎県・鹿児島県38位(897円)と下位に固まっています(最低賃金の加重平均は1,004円)。これらの統計データを見ると九州は貧しい県の集まりであることが分かります。その結果県庁所在市でもテレビで見る東京や大阪の華やかとは大違いです。そのため高校卒業後多くの生徒が県外に出ていくことになります。その場合東京や大阪は遠いし、都会過ぎて怖いイメージですが、福岡はそれ程都会ではなく同じ九州内にある九州人の町であることから安心感があります。だから高校を出た若者の行先として人気があるのは当然です。

福岡は良く家賃や食べ物が安いと言われますが、それは九州の7県が貧乏であることからくる当然の帰結です。九州各県から来る学生の家庭も貧乏家計が多く、高い家賃のところには住めませんし、飲食店も値段が高くては客が入りません。大学や専門学校を卒業して就職する場合でも、福岡には大企業が少なく、就職先は流通サービス業が中心になります。これらの企業は低賃金が多く、贅沢な生活は望めません。福岡の住民の所得は、人口で追い抜いた神戸の8掛け、資産的には6~7掛けだと思われます。従ってこれからの福岡の最大の課題は、高賃金の職場の確保ということになります。福岡の華々しい人口増加の背景には、九州各県の貧困が隠れています。