大谷選手後払いでなければ契約額は5億ドル

今年FAとなった大谷選手がドジャースと10年7億ドルで契約したことが話題になっています。日本では発表当時1ドル146円で1,025億円の契約と騒がれましたが、最近は1ドル142円程度であり994億円となります。米国内の契約であり、大谷選手はドルで受け取ることから円換算はあまり意味がありません。従ってここではドルベースで考えたいと思います。

メジャーリーグ選手の最高契約額はトラウト選手(エンゼルス)の12年4億2,650万ドルでしたから、大谷選手はこれを大きく上回ったことになります。トラウト選手は10年だと約3億5千万ドルですから、大谷選手の契約金額はトラウト選手の2倍ということになります。これは大谷選手がピッチャーとバッターという二刀流でトップクラスである証明として、大谷選手側(代理人ネズ・バレロ氏)が狙っていた金額ではないかと思われます(更にプロスポーツ界の最高額であるサッカーのリオネル・メッシ選手の6億7,400万ドル超えを狙っていた)。そうであれば狙い通りということになりますが、大谷選手の7億ドルの契約は契約期間中に支払われるのは毎年200万ドルで残りの6億8,000万ドルは11年目からの後払い(毎年6,800万ドルを10年間支払う)であることを考える必要があります。この場合後払いでない場合(毎年払い)に支払われる金額が運用された額が10年後7億ドルになると考える必要がありますから、毎年払いの契約額は運用益を差し引いた金額となります。例えば毎年払いで契約金額5億ドルなら、毎年の未払額4,800万ドル(200万ドルは大谷選手が受領)を8%で運用すれば、10年後約6億9,745万ドルになります。大谷選手の7億ドルという契約金額は、このような計算に基づいて算出されたと考えられます。従って毎年払いの条件でドジャース、SFジャイアンツ、トロントブルージェイズ(この3球団は最終的に7億ドルを提案したと言われている)が最初に提案した金額は10年5億ドルだったと考えられます。契約交渉に加わっていたSFジャイアントの元名捕手ポージーは3回提案したと言っていますので、最初の5億ドルの提案がその後2回引き上げられ7億ドルになったと考えられます。その経緯を想像するに、二刀流を目指す選手に夢を与えるためにできるだけ高額の契約にしたかった大谷選手側から最初に提案があった契約額5億ドルを引き上げるために、先ず50%の後払い(シャーザー投手の契約で行われている)が提案された結果6億ドルに引き上げられ、更に全額後払いが提案された結果7億ドルに引き上げられたと考えられます。運用利回り8%と考えれば(10年で2億ドルの運用益)当然出てくる金額です。この際エンゼルスが脱落したと言われていますが、エンゼルスのモレノオーナーは将来球団売却を考えており、10年先に負債を先送りすることはできなかった(7億ドル分売却価格が落ちる)ものと考えられます。

大谷選手としては年間5,000万ドルとも言われる個人スポンサー収入があることから、毎年受け取る必要はありませんから、後払いは全く問題ありません。それに毎年払いの5億ドルを球団が8%で運用してくれるのですから運用に悩む必要もありません。更に大谷選手は自分が年間5,000万ドル(5億ドル契約として)取ったら球団の補強費が少なくなり、チームが弱体化することを気にしていたと思われます。ワールドチャンピオンになることを目指して移籍するのに、自分の高給のためにチームが弱くなったでは意味がありません。このような大谷選手の考えもあって成立した合意と言えます。最終的には大谷選手が決めたのでしょうが、バレロ代理人の事務所に凄腕の運用担当者(チーム)がいることが伺えます。

ここで言えるのはメジャーリーグでの大谷選手の裸の評価額は5億ドルであり、大谷選手の次のような状況を考えると妥当な評価のように思われます。

・2024年度は投げられないこと。

・今回2度目の肘靭帯再建手術は1度目から4年しかたっておらず、大谷投手の肘の有効期間は4,5年程度と考えられ、投手大谷の寿命は5年程度しか見込めないこと。

・その結果二刀流としての契約は5年程度で、後は打者として5年程度の契約となること。

・二投流で年間6,000万ドル(5年で3億ドル)、打者として年間4,000万ドル(5年で2億ドル)で、合計10年で5億ドル。

このように大谷選手の10年7億ドルの契約は見かけより少額であるばかりでなく、ドジャースは丸儲けです。と言うのは、大谷選手が入団する結果、ドジャースは年間5,000万ドル以上収入が増加する(日本企業の広告・グッズ売上・CATVの契約などで)と予想されており、ドジャースはこの収入を銀行に信託(ドジャースが破綻しても支払いは確保される)して10年間運用すれば10年後7億ドルの支払い原資を確保できるばかりでなく、その後約2億ドルの運用益を手にすることができます(大谷選手への支払については10年間無利息の約束だからその間の運用益はドジャースの収入となる)。この結果ドジャースの大谷選手への実質的な支払額は最初の提案通り5億ドルとなります。

大谷選手の7億ドル契約にはこのようなカラクリがあると考えられ、世界のプロスポーツ界最高契約額という名誉が欲しかった大谷選手側に、ドジャースが花を持たせた契約ということができると思われます。