企業で非課税交際費1万円なら個人も同額税額控除すべき

政府・与党は税制改正で企業が使う交際費について経費処理できる上限額を現行の1人あたり5,000円から10,000円に増やすことを決めたという報道です。物価上昇で飲食費が高騰していていることが理由のようです。同時にこれにより企業の交際費支出が増えれば飲食業界が潤うことから、飲食店業界支援の意図があるようです。

企業の交際費は今の税務会計では経費に算入できないため、全額に法人税がかかることになりますが、税法上取引先との接待などに使う場合には1人あたり5,000円以内で経費に算入することが認められています。この制度は企業でフルに活用されており、大企業の営業関係者なら全員が知っている制度です。これが倍になると取引先の接待に使える金額をその分増やすところも出るでしょうが、多いのは金額はそのままで単に損金に歳入出来る金額が増えるだけになる(その分税収が減る)ケースだと思われます。即ち、これにより飲食店への支払増加は余り期待できないと思われます。

それよりも効果があるのは、納税者個人に1年に1回だけ飲食代金10,000円分の税金還付を認めることです。飲食代金10,000円につき5,000円の還付でもよいと思われます。ふるさと納税のよう制度になりますが、利用者はほぼ納税者全員になると思われます。そうなると還付作業が大変になりますが、マイナカードの利用(口座の紐付けも)を必須とすれば、マイナカードの取得促進にもなりますし、手続きが簡素化できます(不正防止にもなる)。これが導入されれば還付金額の数倍の飲食支出増加に繋がると予想され、企業の交際費非課税額増額より遥かに飲食店支援に繋がります。

自民党の税制調査会を見ていると会場には企業や業界関係者が大勢押しかけることから、企業や業界向けには負担軽減や収入増加に繋がる改正が多いですが、個人向けには負担軽減に繋がる政策が出ることはなく、出るのは負担増加になるものばかりです。飲食店業界のような零細企業や自営業が多い業界の支援には、企業の支出増加を図るよりも個人の支出増加を図った方が有効です。これまでは個人は税務申告をしていない人が多いことや個人の税務申告が増えると税務署が大変なことから、個人に対する景気対策は余りありませんでしたが、マイナカードが普及すれば個人を対象とした景気対策が簡単に打てるようになります。今後の景気対策はマイナカードを使った個人への対策が有効です。