北朝鮮は南北2国体制の国際承認に舵を切った?

北朝鮮の金正恩総書記が能登半島地震について5日に岸田首相に見舞いの電報を送ったという報道です。北朝鮮の朝鮮中央通信もこのことを報道したとなっています。電報の内容は「日本が不幸にも新年の初めから地震による多くの人命被害と物質的な損失を被ったという知らせに接した」「遺族と被害者に深い同情と哀悼の意を表する」「被害地域の人々が一日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活を取り戻せるよう祈る」というもののようです。

日本を敵視する北朝鮮の金総書記が日本の首相に電報を送ったのは初めてのことであり、北朝鮮が日本や世界に対する政策を変更した可能性があります。朝鮮中央通信は昨年12月31日、12月26~30日に開催された労働党中央委員会第8期第9回全員会議で金総書記が「北南(南北)関係はもはや同族関係、同質関係ではなく、敵対的な二国間関係、戦争中の交戦国関係として完全に固まった」、「大韓民国のものたちとはいつになっても統一は実現できない」と述べたことを報じられています。一昨年7月にはキム・ヨジョン労働党副部長が談話で「大韓民国」との呼称を用いて、南北関係を国と国との関係と考える態度を示しており、今回の金総書記の発言はこれを公式化したものと受け取られています。

金総書記のこの発言を韓国との戦争準備を宣言したものという捉え方もあるようですが、戦争や融和による南北統一ではなく、南北に2つの朝鮮人国家の併存を目指すことを宣言しているように思われます。

南北統一を目指しているのは北朝鮮のように考えられていますが、実は韓国です。一昨年7月のキム・ヨジョン北朝鮮労働党副部長の発言を受けた韓国のクォン・ヨンセ統一部長官は国会答弁で「憲法に統一追求義務が明示されているため、南北を二つの国とみるのは憲法に反し、受け入れられない」と述べています。北朝鮮が南北2国併存体制を望んでも、韓国が南北統一を国是とし、立ち塞がることになります。北朝鮮としては、南北2国併存体制を支持する国を増やす必要があり、今回能登半島地震を利用して日本にお見舞い電報を送ってきたように思われます。韓国の南北統一政策は韓国が北朝鮮を吸収することがゴールであり、北朝鮮としては到底受け入れられません。これまでは北朝鮮も韓国を吸収する形で南北統一を志向していたのでしょうが、これは同床異夢であり現実的ではないと考えを改めたように思われます。これで南北統一は遠のいたと考えるのではなく、北朝鮮が国際的に認められる国家を目指すことで、将来南北統一の可能性が出てきたと考えるべきではないでしょうか。金総書記の電報は、日本が北朝鮮と国交を回復する機会となるように思われます。