金融庁にこそ業務改善命令が必要
1月25日、金融庁がビッグモーター(BM)損害保険金不正請求事件に深くかかわった損保ジャパンと親会社のSONPOホールディングスに対して業務改善命令を出したという報道です。1月26には損保ジャパンとSONPOホールディングスが記者会見を開きましたから、金融庁と損保ジャパンおよびSONPOホールディングスとの間では、相当前から分かっていた内容だと思われます。
今回の業務改善命令の柱は、桜田SONPOホールディングス会長の退任でした。桜田会長はSONPOホールディングスの天皇と言わる人であり、桜田カルチャーがSONPOグループを染めています。従ってBM不正に対する損保ジャパンの対応も桜田カルチャーから出てきたものであり、桜田会長の剔抉なしに治療は不可能でした。そのため桜田会長の退任は、金融庁の中では早くから決まっていたと思われます。あとは調査の中で桜田会長の非を1つ1つ見つけ、突きつけるだけだったと思われます。桜田会長は最初それに対して気色ばんで反論を加えていたでしょうが、途中で金融庁の狙いが自分の首を取ることだと気づいて徐々に反論する気力が失せていったと思われます。26日の会社会見ではすっかり普通のおじさんになっていました。
この金融庁の対応は、みずほ銀行が2021年にシステム障害を起こしたときと同じです。当時みずほ銀行には持株会社に佐藤康博会長が長く君臨し、丁度SONPOホールディングスの桜田会長の立場にありました。みずほ銀行の役員人事は佐藤会長が差配し、みずほ銀行の幹部は佐藤会長の方を見て仕事をしていると言っても良い状況でした。そのため会社の経営が分かる人が見れば、みずほ銀行に生じる様々な問題は、佐藤会長に起因しており、佐藤会長を剔抉することなしには解決しないことは分かっていました。そのため金融庁の調査の結論は、最初から佐藤会長を退任させることに決まっていたと思われます。従って今夏の損保ジャパンのケースは、みずほ銀行のケースの焼き直しであり、シナリオは最初から決まっていたと思われます。
金融機関の不祥事が相次いでいますが、不祥事の度に金融庁はまるで正義の権化のように改善命令を振りかざしますが、不祥事の発生の背後には金融庁の二重人格行政が見え隠れしています。例えば損保ジャパンの場合、BM不正は相当前から新聞雑誌で報道されており、金融庁も知ることができました。本当に損保ジャパンの不正を防ぐ気があれば、この段階で報告を求めるなり、調査に入るなりするべきでした。それに損保ジャパンには金融庁から相当数の元職員が天下っているはずであり、彼らから報告を求めることもできたはずです。BM事件を受けSONPOホールディングスは社外調査員会を設けましたが、社外調査委員会の委員長となった弁護士の所属事務所の顧問には2020年7月まで金融庁長官を務めた遠藤英俊氏が就任しており(Wikipedia)、金融庁との繋がりの深さが見えます。遠藤氏は金融庁長官退任6カ月後には東京海上日動の顧問に就任しており、金融庁と損保業界の癒着が伺えます。なのに問題が発生するとこんな背景は一切隠して悪者を裁く裁判官に変身することには、損保業界としても納得がいかないと思われます。
金融業界の不祥事の背景には、このような金融庁の二重人格行政があることから、金融庁にこそ業務改善命令が必要です。