麻生氏の上川発言で傷ついたのは河野大臣?

自民党の麻生副総裁が1月28日に福岡県内での国政報告会の中で述べた発言がマスコミやネットで題となりました。発言と言うのは、「俺たちから見ても、ほ~この“おばさん”やるねと思いながら、この間ニューヨークで会ったけど、少なくともそんなに美しい方とは言わんけれども、外交官の手を借りなくて、『私がやるからいい』って、どんどん会うべき人たちには自分で予約を取っちゃう。あんなことができた外務大臣は今までいません。新しいスター、新しい人がそこそこ育ちつつあるんだと思いますね」

これは麻生氏としては飲めない派閥解消を言い出し、支持率も低迷している岸田首相に代えて上川外相を首相に担ぎ出すために麻生氏が上げたアドバルーンであり、内容的には上川絶賛発言です。マスコミやネットの噛みつき亀が“おばさん”や“そんなに美しい方とはいわんけれど”という言葉を切り取り、噛みつきました。言われた本人の上川外相は、

「さまざまな意見や声があると承知しているが、どのような声もありがたく受け止めている」「使命感を持って一意専心、努力を重ねていく」と述べて取り合いませんでした。そして麻生氏も2月2日には「表現に不適切な点があったことは否めない」として撤回しました。麻生氏も本音では「どこがおかしい。日常的に誰でも使っている表現じゃねえか。」と言うことでしょうが、思いもかけず上川外相を首相候補として全国的に認知させる効果があったことから話題に終止符を打ったものと思われます。

この発言で上川外相は首相候補として全国的に認知されましたから、麻生氏には感謝しかありません。一方麻生発言は上川外相1人に向けられており、誰も傷つけていないように思われますが、1人だけ傷ついた人がいると思われます。

それは河野太郎デジタル庁担当大臣です。岸田首相の支持率が低迷し、麻生氏が反対する派閥解消に岸田首相が踏む込んだここから、今年9月の自民党総裁選での岸田再選はなくなり、麻生氏は自分を首相に担いでくれると思っていたら、なんと上川外相を担ぐと言い出しました。河野氏は長く麻生派に属し、自他共に認める麻生派の次の会長候補です。一方麻生氏は2021年9月の総裁選に河野氏が立候補したにも関わらず積極的に支援せず、最終的には岸田氏を支持しました。たぶん麻生氏が安倍氏が高市氏にしたような支援を河野氏にしていれば、河野氏が首相になっていたかも知れません。麻生氏が河野氏を支持しなかった理由として、河野氏は麻生派で面倒見が悪い(そのため仲間が少ない)ことを挙げていましたが、河野氏が予想外の党員や議員の票を獲得したことから麻生氏としても「次は河野」との思いがあったと思われます。そのため河野氏も「次は自分を担いでくれる」と期待していたものと思われます。これが変わったのは、河野大臣がマイナンバーカードの導入を強引に進めた結果トラブルが多発し、それに対する高飛車なモノお言いが国民の反発を受けたことがあることように思われます。それでも河野大臣は、「麻生さんは自分を首相に担いでくれる」と信じていたと思われますが、麻生氏が「次は上川」ととられる発言をしたことには、少なからずショックを受けていると思われます。

安倍派の裏金疑惑を受けて、安倍派、岸田派、二階派など多くの派閥が解消を決めた中で、麻生氏は麻生派を政策集団して維持すると宣言しましたが、麻生氏が自分を首相に担いでくれない以上河野大臣としては麻生派にいても意味がありません。一方では菅元首相が河野大臣を高く評価しており、総裁選での支援が期待できます。そのため河野大臣は近々麻生派を離脱することが予想されます。