日野と三菱ふそうの統合は破談が望ましい
日野自動車(日野)は2月29日、2024年3月期中の最終契約締結と2024年中の統合完了を目標にしていた三菱ふそうトラック・バス(三菱ふそう)との経営統合の日程を延期すると発表しました。理由は日野の認証問題への対応が継続していることや統合のための国の許認可の取得が遅れているためとしています。今後の経営統合の実施時期については、日野、三菱ふそうと、それぞれの親会社であるトヨタ自動車、ダイムラートラックの4社で合意次第発表すると言うことです。
これは統合発表当初から予想されていたことです。統合は日野の認証不正対応の真っ盛り中に発表されており、拙速感が否めませんでした。これはトヨタの焦りとそれを見透かしたダイムラーの強奪欲が原因であり、トヨタが冷静になれば一度立ち止まるところです。
トヨタを立ち止まらせたのはダイハツの認証不正ではないかと思われます。ダイハツの認証不正は日野ほど悪質とは見なされていませんが、やっていることは同じです。日野を三菱ふそうと統合させてダイムラーに再建を委ねるのならば、ダイハツもスズキと統合させてスズキに再建を委ねるという結論になります。しかしダイハツは認証部門を中心にトヨタの関与を強めるだけで、これまで通りダイハツ主体の経営を続けることにしました。当然でダイハツに問題があったのは認証部門だけで、その他の部門はトヨタに負けない運営がなされていました。特に低いコストで車を作るノウハウはトヨタが太刀打ちできるものではなく、トヨタへの統合はあり得ませんでした。従って認証部門の改善を図れば、ダイハツはトヨタグループにとって不可欠な会社であることは明らかです。たぶん今回のダイハツ不正でトヨタはこのことを再確認したものと思われます。
そうだとすれば日野も同じです。日野に問題があったのは認証部門だけであり、その他の部門はいすゞなど他のトラックメーカーに劣っていたとは思えません。従ってトヨタとしては認証部門を一緒になって改善すればよかったのであり、一挙に三菱ふそうとの統合に突き進む必要はありませんでした。日野とトヨタの協業は2001年にトヨタが日野に50.1%出資し子会社化してから上手くいっており、2~3トンクラスのトラックではいすゞを追い詰めるほどになっていましたし、海外でもインドネシアを中心にいすゞより勢いがあったように思われます(いすゞが優勢なのはタイだけ)。このままトヨタとの協業を続ければ将来的にいすゞを抜くことも夢ではなかったと思われます。それを認証というトヨタの目が届かない業務で不正が行われていたという1点を持って全否定するのは、豊田会長らしくないしトヨタらしくないやり方だと思われます。
またダイムラートラックに日野の再建を委ねると言うのも筋が悪すぎます。三菱ふそうはダイムラー傘下になるまでいすゞ、日野と並ぶ3強でしたが、ダイムラー傘下になってから業績を落とし続け、いすゞの3分の1以下、日野の半分程度の売上高になっています。これはダイムラー流のマネジメントが日本のトラック顧客に嫌われているからであり、ダイムラーと統合することは、日野が三菱ふそうの二の舞になることを意味します。たぶん10年後には1(三菱ふそう)+2(日野)が1+1になっています(日野の売上が減少する)。
これなら現状のままトヨタグループとして再建した方が将来展望が開けます。今後日本の人口減少によりトラック需要も減少しますので、トラックメーカーは国内1社で十分です。そうなると日野はいすゞと経営統合し、持株会社の下にいすゞ、日野およびUDがぶら下がり、顧客に好みのトラックを供給することが考えられます(三菱ふそうはダイムラー傘下のまま)。トラックについては独禁法の競争政策よりも供給責任を果たす方が重要になります。
日野と三菱ふそうの経営統合は破談が望ましいと思われます。