賃上げとリストラが同時進行する

今年の賃上げは記録的な額になりそうです。すでにホンダやマツダは組合要求に満額の回答をしています。サントリーも過去20年で最高と言う7%の賃上げを回答しています。その他銀行や生損保も7%前後の賃上げを表明しています。

昨年韓国サムスン電子従業員の平均年収(2022年)が約1,440万円という記事を見て、韓国企業の年収の高さに驚いていたら、日本でも東京エレクトロンの従業員の平均年収(2023年)は約1,390万円だったという記事を見ました。どうも日韓とも半導体関連企業は大儲けのようで、利益を従業員に還元しているようです。これは良いことで、ベースアップよりも利益配分を見直した方が従業員の年収は増えるように思われます。基本年収は500万円だけど会社の利益が計画を上回ったので従業員への利益配分が増え、年収が1,000万円を超えたということの方が夢がありますし、やる気が出ます。従って会社の組合はベースアップのような旧来型の賃上げではなく、利益配分の見直しを要求する必要があると思われます。

最近賃上げのニュースと共に新聞紙上を賑わせているのがリストラのニュースです。大幅な賃上げのニュースが多い中でリストラのニュースが多いのは奇異な感じもしますが、これには因果関係があると考えられます。それは大幅な賃上げをすれば人件費が増えますが、会社の売上や利益の増加は不確実なため、人員を減らすことで人件費の増加を抑制する必要があるからです。そのため不採算事業の廃止が進められますし、トータルな人員の削減も進められます。オムロン(約2,000人)や資生堂(約1,500人)、ソニーゲーム部門(約800人)などのリストラにはこのような背景があると考えらえます。

日本の賃金はドルベースで換算すると先進国と比べ半分くらいのレベルであり、国際企業においては日本人幹部社員のドルベースの年収が現地従業員より低いという状態が増えています。そのため国際企業はこれを是正するため日本人社員の年収を国際ベースに引き上げると考えられます。その結果日本の企業でも国際企業と国内企業では年収が倍以上違うというのが普通になると思われます。しかし一方国際企業は日本人社員の全員をこの待遇にすることはできないので、待遇に見合わない社員のリストラを進めることになります。これは欧米企業によくみられるリストラであり、賃金の国際化は労働環境の国際化をもたらすことになります。

国内企業も国際企業との人材獲得競争上賃金は引き上げざるを得ず、今後とも賃上げは継続すると思われますが、同時並行的に上がった賃金に見合わない社員のリストラも進むことになります。従って賃上げは社員に厳しい競争環境をもたらすことになります。