トラックメーカーは国内1社体制がよい
いすゞ自動車(いすゞ)は2024年4月3日、2030年度に向けた中期経営計画(中計)を発表しました。2030年度売上高6兆円、営業利益率10%を目指すとしています。2024年3月期が売上高3.4兆円、営業利益8.2%となっていますから、売上高が難題のように思えますが、毎年10%伸ばせばよく、今の円安基調なら十分可能な計画のように思えます。営業利益率10%についてはかなり抑えており、15%も可能なように思えます。
中計では自動運転、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルの3領域を柱になるとなっていますが、電気自動車と同じくそう簡単ではないように思われます。というのは、運送業界は保守的な業界であり、新しいものにはなかなか手を出しません。それにトラックドライバーも慣れ親しんだ既存のトラックを選択するものと思われ、これら3つの領域の売上高は計画の半分の5,000億円も行けばよい方ではないでしょうか。その結果中計達成の肝は既存のディーゼルエンジントラックの拡販にかかってくると思われます。そのためエンジン開発の強化が重要となります。
現在国内と海外の販売高は約35:65の割合ですが、国内は今後ドライバー不足や物流減少によりトラック販売価格の上昇による伸びしか期待できません。その結果中計の売上高では国内30:海外70くらいの割合になると予想されます。このように国内マーケットは余り期待できませんが、日本のトラックメーカーである以上販売したトラックが故障なく稼働できるように整備サービスを提供する必要があります。整備サービスは各地の販売店(ディーラー)が提供していますが、今でも整備工(メカニック)の確保に苦労しており、今後メカニック不足で十分な整備サービスが提供できなくなる可能性があります。若者の減少により乗用車のメカニックも不足しており、車体が大きく危険を伴うトラックのメカニックが大幅に不足するのは確実です。三菱ふそうがBMWなどとドイツ型のメカニック養成プログラムを始めたのは、メカニック不足が深刻化しているためだと思われます。
そのためメカニックの確保はいすゞの中計達成にとっても重要なテーマになると思われます。この解決方法としては
- メカニックの賃金を大幅に引き上げる(現在の2倍)
- 整備工場をメーカー直営とする(メカニックもメーカー採用)
- 各トラックメーカー系列のディーラー整備工場を融通しあう(空きを活用する)。
- 更に進んで各トラックメーカーのディーラー整備工場を統合する。
若者人口の減少とトラックメカニックの不人気からこのような経緯を辿ると考えられますが、そうなると国内に関してはトラックメーカーも1社に集約した方が良いことになります。現在国内トラックの売上高は約2兆円(いすゞ約1兆円、日野約5,000億円、三菱ふそう約3,500億円、約UD1,500億円)と予想されますが、これでは各社で自動運転、コネクテッド、カーボンニュートラルなどの課題を解決するには資金不足です。1社に集約してやっと対応可能と考えられますし、国際競争も可能となります。
現在日野と三菱ふそうの統合計画が進行中ですが、これでは何の解決にもなりません。いすゞを中心に日野、三菱ふそうが持株会社の下統合し、先ずは開発など共通機能を集約化するとともに時間をかけて合併しないと、日本のトラック問題は解決できません。日野といすゞは同根であり、社風もあまり違わないことから、持株会社による統合および合併も考えられたと思われますが、この場合普通トラックで8割近いシェアとなり、公正取引委員会の承認が得られないと断念されたと思われます。しかしメカニック不足で整備サービスが提供できない(トラックの稼働が確保できない)ことを考えれば、統合や合併はいずれ必要なることから公正取引委員会も承認するしかないと思われます。このことを経産省や政府を通じて公正取引委員会に訴えれば理解を得られるはずです。その場合、ダイムラーが三菱ふそうを手放すのであれば、3社統合でも良いし、手放さないのであれば三菱ふそうはダイムラー傘下でも良いと思われます。この話はいすゞの片山会長とトヨタの豊田会長が話し合えば実現可能であり、いすゞ中計の裏テーマにあっても良いと思われます。