品質不正の横行は検査のIT化の遅れが原因
日本のメーカーで品質不正が相次いでいます。実は損保ジャパンの保険不正や自民党国会議員の裏金作りで分かるように、不正は日本社会のどこにでもある問題なのですが、こちらは国内的問題であり国際的にはどうでも良い問題です。一方メーカーの品質不正は、日本製品の評価を落とし、輸出の減少に繋がり、日本に与える経済的ダメージが深刻です。これだけメーカーの品質不正が続発すると、かっては高品質の代名詞だったmade in Japan のブランドが不信のブランドに替わってきていると考えられます。円安が進み1990年頃の1ドル155円レベルとなり、輸出には良い環境となりましたが、品質不正でこれだけ信用を落とすと、輸出したくても買い手がいない状況となります。
従って日本のメーカーは何としても品質不正を無くす必要があります。品質不正が続発する原因は、品質検査を人に依存しているからだと思われます。具体的には、
- 品質検査のためのデータを人が測定している
- 機械で計測したデータを人が操作できるようなっている
ことが要因のように思われます。
人が測れるものを機械が測れないはずはありませんから、①については改善が可能だと思われますし、この例は少ないと思われます。問題は②で、これは多くのメーカーの実態だと思われます。そうだとすれば、品質検査担当者(部署)は、品質検査に通らないと開発がやり直しとなり、会社の業績に大きな悪影響を与えることを知っていることから、品質検査のデータを改ざんする誘惑にかられます。改ざんは自分のためではなく会社のためであることから、罪の意識は少ないと考えられます。また品質不正は長い間継続している場合が多く、単に慣習に従っただけという意識かも知れません。
これを防ぐためには、検査のために機械で測定したデータを担当者が直接触れないようにすればよいと考えられます。例えば、機械で測定したデータは直接サーバに送られ、そこで暗号化(ハッシュ化)されて保存されるものとします。品質検査担当者は、サーバにハッシュ化されて保存されたデータを復号して確認します。このデータには品質検査担当部署ばかりでなく品質監査(保証)担当部署もアクセスできるものとし、同じく復号して監査に使用します。もし品質検査担当部署でこのデータを1文字でも改ざんしサーバに送ればハッシュ値が激変する(全く別のデータに替わる)ことから、改ざんがバレてしまいます。
このように品質関連のデータ改ざんを防ぐことはIT技術を使えば可能であり、これが行われていないだけだと思われます。これが行われなかったのは、日本のメーカーのIT化の遅れが原因です。そしてこれが一番遅れていたのが品質検査部門だと思われます。
日本は失われた30年で中進国レベルの所得水準になりましたが、円安になっていることから輸出で復活できる可能性が出てきました。しかしこうも品質不正が明らかになると、日本製品は安いけれど品質が不安という評価になり、輸出は増えないことになります。日本の復活は偏に日本製品の品質に対する信頼の向上にかかっています。