当選祝いの胡蝶蘭は禍の元
3月24日に投開票が行われた熊本県知事選で当選した木村知事が当選後の3月下旬、妻と2人で熊本市内の病院や福祉施設など県内の7か所に胡蝶蘭を10個ほどを持ち込んでおり、これが公職選挙法違反の疑いがあると言う報道です。公職選挙法は、政治家による選挙区内の有権者への寄付行為を禁じていて、これに抵触する可能性があるとのことです。これについて木村知事は、「事務所を閉めるまで(残り)1日、2日という中で捨てたくないという思いから回れる範囲で預けにいった」 「自宅が手狭で事務所にも置けず預けただけ。相手に利益を与える意図はまったくなかった」「知事公舎に入居した後に預け先から引き取りたい」「寄付ではない」と弁明したということです。「預けた」と言うのは後付けで、その時の意志はあげる(贈呈する)だったと思われます。
本件につき政治資金の問題などに詳しい学者は、「預けたとしても、飾られていたのであれば、利益的な価値が生じて、公職選挙法に違反する恐れがある」と言っています。
形式的には公職選挙法違反に当たると思われますが、本件を検察が取り上げることはないと思われます。それは
・選挙終了後であり買収効果は薄いこと
・木村知事は当選しているがまだ知事には就任しておらず政治家とは言えないこと
・木村知事の「捨てるのはもったいない」という意図も理解できること
などを理由とします。熊本県民も同じような見解だと思われます。
選挙後当選者がお祝いに贈られた胡蝶蘭に囲まれた写真やテレビ映像が見られますが、今回の事件は、胡蝶蘭の危なさを浮き彫りにしたように思われます。たくさんの胡蝶蘭を貰っても木村知事のように全部自宅や事務所に飾っておけず、かといって高価なことから捨てるわけにもいかず、処分に困ります(胡蝶蘭の寿命は1~3カ月)。そこで多くの当選者が事務所職員や関係者に分け与えているものと思われますから、胡蝶蘭を巡る公職選挙法違反は多く発生していると思われます。従って胡蝶蘭は沢山もらえば公職選挙法違反になる恐れが大きいことになります。
また贈る方にも問題があります。贈る方は当選者と利害関係がある人が多いと思われ、胡蝶蘭が賄賂とされる可能性があります。マスコミが胡蝶蘭の贈呈者を書き留めておき、その後当選者との付き合いを追跡すれば、かなり親密な関係が浮かび上がると思われます。従って贈呈者にとっても胡蝶蘭を贈ることはリスク管理上望ましくないことになります。
木村知事の胡蝶蘭問題から、当選祝いでよく用いられる胡蝶蘭は、実は禍の元であることが明らかになりました。