旅客機プロジェクトはホンダジェットを中心に
経済産業省は、次世代の国産旅客機について官民一体で2035年以降の事業化を目指す航空機産業戦略を策定したという報道です。三菱重工が撤退した国産小型ジェット旅客機「スペースジェット」事業を教訓とした上で、今後10年で官民で約4兆円規模の投資を行い、国産旅客機の開発に改めて挑戦するとしています。官民と言っても民間企業で投資する企業はないことから、半導体のラピダスと同じように国が必要資金の大部分を拠出する覚悟のようです。
このプロジェクトは「スペースジェット」の開発経験のある三菱重工が中心になると思っていたら、そうでもなさそうです。三菱重工業の泉澤清次社長は、マスコミインタビューで「現時点で具体的な計画を持っていない」「同時期に日英伊3カ国による次期戦闘機の開発が進んでおり、リソース的にはタイトだ」と述べていますので、三菱重工中心で進めることには消極的なようです。そうなると旅客機開発のノウハウを持つ大手メーカーは国内に他は無く、頓挫してしまいます。
そこで浮かぶのがホンダジェットを開発製造するホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)です。HACIは現在乗員10名未満の小型ビジネスジェット機を開発製造販売し、これまでに200機以上が運行されており、現在は乗員11名のモデルを開発中とのことです。HACIの小型ビジネスジェット機はエンジンが主翼の上にある斬新なデザインで知られています。三菱重工が開発に失敗した旅客機は従来のデザインの後追い感が強かったのに比べて先進性が期待できます。多くの国民が旅客機産業を育成するのには賛成だけど三菱重工がやっても余り期待できないという感想を持っていると思います。やはりこういう夢のあるビジネスは、期待できる企業を主体とする必要があります
この場合、ホンダの子会社のままでは開発費の累積赤字がホンダの決算に影響するので、HACIをホンダから切り離し、産業革新機構が大株主となる資本構成に変更します。そして開発費については、半導体のラピダスのように国が産業革新機構を通じて全額提供します。そうすれば面白い旅客機が作れるかも知れません。