卓越大学より野放し大学がノーベル賞は多くなる

政府は世界と伍する研究大学作るためにその資質を備えた大学を国際卓越大学に認定し、必要な研究基盤構築のための資金として10兆円の大学ファンドを設け、その運用益を長期的に交付し支援することにしています。そして国際卓越大学の第1号候補には審査の結果昨年12月東北大学が選ばれました。日本においてノーベル賞受賞者を多数輩出し、自他共に日本の卓越大学と認める東大および京大を差し置いて東北大学が認められたことは、大学関係者にとって驚きでした。これは東大および京大には選ばれて当然という意識があり、現状の延長線上の計画書になっていたのに対し、東北大学は運営を大きく変える内容になっていたことが原因と考えられます。たとえ東北大学が国際卓越大学の第一号になったとしても、すぐさま東大および京大が相次いで認定されることは間違いなく、日本の大学の序列が変わることはありません。それは大学の研究者が優秀な順に東大および京大から配置され、東北大学は東大に残れなかった研究者または東北大学の優秀な研究者で構成され、最初から研究者の資質に大きな差があるからです。

国際卓越大学にはノーベル賞受賞者数の増加が期待されているようですが、この制度からノーベル賞受賞者が増えるとは考えられません。それは、ノーベル賞が狙って取ったものが少なく、国際卓越大学では研究テーマの選定から進捗状況まで審査会や委員会で管理されることになりますが、これらの委員が評価できるものからはノーベル賞は出ないと考えられます。例えばips細胞発見者の山中教授は研究者としては殆ど無名であり管理が厳しくない奈良先端大学だったからこそips細胞の研究ができたと言えます。オプジーボの発見でノーベル賞を受賞した本庶京大教授も研究実績ではそんなに注目されていませんでした。国際卓越大学が審査して研究テーマや研究者を選ぶとすれば、2人とも選ばれなかった可能性が高いと思われます。

日本のおいては東大および京大の研究者から圧倒的にノーベル賞受賞者が多い(全受賞数28人中、東大卒9人、京大卒8人)ことから分かるように、ノーベル賞受賞には東大および京大に合格できる学力基盤が必要であると考えられます。それと学力では東大より1ランク落ちる京大が東大と並ぶ受賞者を出していることは、大学が持つ研究風土が大切であることが分かります。私は東大と京大の研究者の研究成果発表をいくつか聞きましたが、両者には明確な違いがあるように感じました。東大の研究者の研究テーマは世界のトップ大学の研究者が競っているテーマが多く、その中で日本では自分がトップという内容が多いように感じられました。そのため発表データが豊富で、さすが世界の第一人者と思わせるプレゼになっていました。一方私が聞いた京大の研究者の発表は、言葉は悪いですがスカスカ、小学生の観察日記のような内容でした。最初は東大の研究者と差が著しいなと思いましたが、実はノーベル賞を狙うなら京大の研究者のやり方が王道であるあることが分かりました。京大の研究者のプレゼ内容がスカスカなのは、研究テーマが誰もやっていないことであり、自分が実験で検証したことが世界で唯一分かっていることだからだったのです。従って研究発表の後での質疑応答では、仮定の質問に対して「それは検証できていませんから分かりません」という答えが多くなります。これは「分からない事は何もない」ことでプライドを維持してきた東大出身の研究者には耐えられない状態だと思われます。これに耐えられることが京大の研究者からノーベル賞受賞がたくさん出る要因のように思われます。

京大にはノーベル賞受賞者を輩出する文化や風土が根付いており、京大は国際卓越大学に認定するより、国際卓越大学並みの予算を与え野放しにする方がよいように思われます。国際卓越大学の制度が確実にノーベル賞受賞者を増やせるというエビデンスがない以上、京大はこれまでのまま野放しにして、どちらがよいのか検証すべきです。