円安になっても輸出する物がない
内閣府が5月16日発表した2024年1─3月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質が前期から0.5%減り、2四半期ぶりにマイナスとなったということです。年率換算では2.0%減ということですから、かなり大きな減少となります。減少の要因として、認証不正によるダイハツ車の生産・販売分の減少、能登半島地震による消費の減退、企業の設備投資の減少、民間住宅の建設の減少が上げられています。このうちダイハツ車の影響が上げられているのを見るとダイハツも大きな会社であることが分かります。
最近ドル円レートが1ドル160円を超えたら財務省が円買いを行い、153円くらいまで円が急上昇しました。日本は1990年以降30年以上賃金や物価が上がらず、世界の成長から取り残されてきました。一方ドル円レートは110~120円とあまり下がっていませんでしたので、現在の150~160円はまだ適正水準まで下がる過程にあると考えられます。私は1ドル200円ぐらいが適正レートだと考えます。
ドル円レートが円安になった影響で、輸出の割合が高い企業を中心に好決算が続出しています。米国での販売台数が多い自動車メーカーは、トヨタの営業利益が5兆円、ホンダも1兆円、日産も5000億円を超えるなどどこも過去最高かそれに近いものとなっています。メガバンクも過去最高利益を出していますが、これも海外からの収入が円安によって膨らんだ影響です。デパートや鉄道、航空などはインバウンドが回復した影響で好決算となっていますので、これを円安の影響と言えます。
しかし1-3月期のGDPが落ちたと言うことは、これらの決算が好調であった業種でもカバーできなかったと言うことですので、今後更に円安になっても好影響は限られ、むしろ輸入品の値上がりによる物価の上昇が国内景気に悪い影響を与えることが危惧されます。
これは円安になって日本から海外に輸出できるものが限られるからです。現在日本から輸出できるものと言えば自動車くらいしか浮かびません。業績が良い半導体製造装置は円安だから売れるわけではなく、半導体の需要が低迷している現在は円安の恩恵は少ないようです。
こう考えると本当に日本には輸出できる商品がなくなったことが分かります。バブル前は家電や半導体が世界中に輸出されていたのに、今ではほとんどなくなりました。これらは韓国や中国企業の安い製品に負けたと言われていますが、実は日本の企業が高級品に移行できなかったのが本当の原因です。韓国の会社員は現在日本の会社員より高賃金となっていますので、韓国の企業は昔のように安い製品を作っていたのではやっていけませんが、見事に高級品にシフトしています。韓国製のテレビなどの家電製品やスマホは世界中で高級品として販売されていますし、半導体や自動車も高価格の割合が高まっています。こんな中日本が円安を利用して輸出を増やそうとすれば、低価格から中価格帯で勝負するしかないように思われます。その場合若者人口の減少と生産現場での確保の難しさから、生産を高度に機械化する必要があります。これは最近たくさん露呈した品質不正を防ぐ方法でもあります。どうやら日本復活のカギは生産現場の高度な機械化にかかっているようです。