生損保が介護サービス会社を経営する訳
損保ジャパンのTVコマーシャルは見ませんが、損保ジャパンンの子会社であるSONPOケアのそれはたくさん見かけます。SONPOケアは老人ホームや介護施設の運営会社であり、なぜ損害保険会社が買収してまで経営するのか不思議に思っている人も多いと思います。損保ジャパンは日本有数の好待遇会社として知られていますが、老人ホームや介護施設は待遇が悪いことで有名です。損保ジャパンの好待遇は、損害保険は国のインフラであるとして、金融庁がどんなことがあっても潰れないように保護していることから生まれています。高給を必要経費に計上してもなお多額の利益が出るような保険料の設定を金融庁が認めているのです。最近も来年1月から自動車保険を値上げると報道されています。一方損害保険業界は今年の3月決算で史上最高の利益を上げています。今後は保険契約を維持する為に持っていた保有株式を処分することを計画しており、利益は増えることはあっても減ることはありません。従って損害保険業界は潰れることは絶対にない恵まれた業界ということができます。これは国(金融庁)の保護があることが絶対的な理由であり、損保業界は国に頭が上がりません。
このことが分かれば損保ジャパンが儲からないSONPOケアを経営する背景が見えてきます。国は今後ますます増加する老人の収容先とそれを世話する職員の確保に頭を痛めています。今ある介護サービス会社はどこも資本力が弱く、施設も増やせないし、待遇も上げられず職員を確保することができません。そこで国の政策によって余るほどの利益を確保している損害保険会社に介護サービス会社の面倒を見るよう要請しているものと思われます。その結果損保ジャパンは介護サービス会社メッセージなどを買収し、介護サービスに進出することとなったと思われます。介護サービスは損保のような国の保護がなく、そのため低収益な事業です。従って高収益の損保が進出する新規事業ではありません。そのため国が損害保険で制度的に十分な利益を確保してあげる見返りに、社会的に重要な事業である介護サービス会社を1社面倒を見るよう要請していると考えないと合点がいきません。
SONPOケアになってからTVCMを沢山流した結果イメージがよくなり、かつ給与水準も引き上げられたようですから、大きな効果があったと言えます。
昨年11月29日には介護サービス業界最大手のニチイ学館を日本生命が買収すると発表しています。日本生命は買収の理由として超高齢社会における「サービス提供体制の高度化」「新規事業の推進」を理由に挙げているようですが、生命保険業界が国に保護化された安全地帯なのに対して介護サービス業界は保護から一番遠い辺境の地と言えます。そこに手を出したのは、日本生命の本意とは思えず、国から何らかの要請があったからと考えるのが妥当です。生命保険会社は箸の上げ下げまで金融庁に監督されており、兼業できる事業が厳しく制限されています。普通なら採算性の良くない介護サービス事業は保険契約者に負担を掛ける可能性が大きいとして認めないところですが、逆に昨年11月30日認める方向性を出しています。ここからこの買収は、金融庁、ひいては国の後押しによるものと考えることができます。
これが当たっているならば、第一生命や住友生命、東京海上日動、三井住友海上火災などが介護サービスの会社を買収し、保険料を介護サービスに充当する(介護サービスにかかる費用を保険料に上乗せして徴収する)ようになると予想されます。従って生命保険および損害保険の保険料は今後益々上がることになります。