法科大学院の教官は全員司法試験合格者にしないと

法科大学院の数がどんどん減っています。2024年1月時点で存続中の法科大学院は国立で15、公立が2、私立が17、合計34となっています(廃止された法科大学院ばかりでなく新規募集を停止し将来廃止される法科大学院も除く)。ピークには74ありましたから、40が廃止された(される)ことになります。この最大の理由は、当初法科大学院入学者の約半分は合格できると言われていたのが反故にされ、約1,500名程度と従来と変わらない狭き門となっていることから、入学者が大幅に減り採算が合わない法科大学院が増えたからです。法科大学院制度が始まった当初の入学員定員は約6,000人で、これを上回る入学がありましたが、2023年度を見ると定員が2,197名、入学者が1,971名と定員割れの状態となっています。ただし、高い司法試験合格率を誇る東大、京大、一橋大、慶大、早大などには応募者が集中し、合格率が低い法科大学院の定員割れが著しくなるという二極分化の状態になっています。この定員で最終合格者数が約1,500人だとすれば、複数回受験を含めても当初計画の法科大学院修了者の半分は合格できるという計画は近々達成されると思われます。

しかしそれでも合格者数が20名以下だと定員は倍として40名以下であり、これでは法科大学院独自の教官を確保し経営するのは困難であり、常に大学で法科大学院の存廃が検討されることになります。合格者数20名以下の法科大学院は地方の国立大学に多いため、道州制の単位において1つの法科大学院を残し、他は廃止するという動きになると思われます。実際九州では鹿児島大学や熊本大学が法科大学院を廃止し、九州大学のみが残しています。北海道は北海道大学のみですし、東北、東海、北陸もそうなっています。中国・四国が広島大学と岡山大学で競っており難しいところです。こうなったとしても残った法科大学院は今の合格者数の少なさでは将来廃止となってもおかしくありません。従って合格者数を増やすため法科大学院改革が必要となります。

そこで是非必要となるのは、法科大学院の教官を全員司法試験合格者とすることです。例えば九州大学や北海道大学、東北大学の法科大学院は大体毎年20名前後の合格者ですが、法科大学院の教官は大学法学部から移ってきた人と大学法学部との兼任者が大部分です。常勤の弁護士資格取得者はわずかしかいません。法科大学院に入学するのは司法試験に合格するためであることを考えると、教官は司法試験合格者が望ましいことになります。司法試験合格者が教官となれば、司法試験に出る分野を重点的に教えますし、合格答案の書き方も指導できます。法科大学院の教官は予備校講師と同じことが求められます。地方の国立大学法科大学院はこの点で大きく劣っており、現在の少ない合格実績は当然と言えます。同時に法学部を3年で終了し法科大学院に進学できるコースもできたようなので、法科大学院の教官がこのコースの学生も一貫して教育する制度も必要となります。そうなると法科大学院は司法試験予備校として高い合格実績を誇る(予備試験合格者の大部分が通っていると言われる)東京の伊藤塾の形に近づくことになります。どうも有名国立大学法科大学院の教官には「俺らは研究者であり、予備校の教師ではない」というプライドがあり、伊藤塾の講師(全員司法試験合格者で、かつ論文試験上位合格者が多い)を見下しているようですが、司法試験受験者が望んでいる教官は伊藤塾の講師です。

地方国立大学の法科大学院は伊藤塾に倣った体制にしない限り生き残りは困難だと考えられます。