損保の政策保有株売却益は保険料値下げに充てるべき

東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社は、今後数年かけて政策保有株約6.5兆円をすべて売却すると発表しました。

これは、昨年企業向け保険料で4社が事前調整を行っていたことが明らかとなり、その原因は損保が契約先企業の株式を大量に保有していることにあることから、改善策として金融庁が求めたもののようです。損保はこれまで企業と保険契約を締結すると保険料に応じて取引先企業の株式を取得し、安定株主の役割(政策保有株)をアピールして来ました。その結果企業ごとに最大の株式を保有する損保が幹事となり、その企業に関する各種の損害保険の保険料と損保ごとの引受シェアを調整する仕組みが出来上がっていました。さらには各企業に損保代理店を作らせ、その代理店を通して契約を結び手数料を落とす仕組みとし、企業が保険料の値下げを迫れない(代理店の収益が落ちる)ようにしていました。このような仕組みのため企業向け保険は損保に大きな利益をもたらしてきました。今回損保の政策保有株が売却されれば、損保と企業との保険契約がビジネスライクとなり、保険料の値下がりが期待できます。そのためには同時に企業の保険代理店が自社の損害保険契約を結ぶと言う仕組みも解消する必要があります(損保との直接契約とする)。

政策保有株の売却により損保は5兆円以上の売却益を得ると言うことですが、これについて損保ジャパンは、売却益の半分を株主還元に充て、残りを成長ドライバーとして位置付ける海外での事業拡大や人材への投資などに充てる計画とのことです。おそらく他の損保も同じような答えになると思われますが、これには「ちょっと待った!」です。損保は政策保有株によって保険料の調整を行い、契約先企業から過大な保険料を徴収してきたわけですから、政策保有株売却益は優先的に保険料の値下げに使われるべきなのです。来年から自賠責保険の保険料値上げが予定されていますが、政策保有株売却益の一部を自賠責保険の原資に組み入れれば、または自賠責保険の運用にかかる人件費部分に充当すれば、自賠責保険料を値上げする必要はありません。また地震保険についても値上がりが続いていますが、政策保有株売却益の一部を保険原資組み入れれば、これも避けられます。損保は毎年数千億円の利益を計上しており、社員に支払う報酬は日本屈指のレベルです。これは過大な保険料を徴収していることが原因であり、それは政策保有株と企業代理店制度および金融庁の過度な損保保護(国民軽視)政策が背景にあります。これらの清算とお詫びとして政策保有株売却利益は、真っ先に保険料値下げとして保険契約者に還元されるべきです。