高給企業は遠慮なく賃上げを続ける

厚生労働省が6月5日発表した4月の毎月勤労統計調査によると、基本給にあたる所定内給与は前年同月比2.3%増え、伸び率は29年6カ月ぶりの高さなりましたが、実質賃金は同0.7%減で過去最長の25カ月連続マイナスとなったということです。

基本給の伸びは、今年の春季賃上げ率が5%台と2023年(3%台)よりさらに高い水準を記録し、早期に妥結した企業は4月から基本給に反映されたためと思われます。しかし大部分の企業において賃上げが本格的に寄与し始めるのは夏頃からと言われており、夏頃までは基本給の上昇が続くことが予想されます。

問題は実質賃金で、今後電気代に対する国の補助金がなくなることなどの影響で電気代が大幅に値上がり(5月比一般家庭標準モデルで約2,000円)しますし、キャベツやジャガイモなどの野菜の中には倍くらいになっているものもあります。コメもインバウンドの影響で消費が増えているということですから、新米から大きく値上がりすることは確実です。輸入している物についても円安により牛肉や豚肉が値上がりしていますし、小麦など大量に消費する農産物の値上げも確実です。こう考えると今までの生活を維持するには、20%程度多い支出が必要になると予想されます。

今年の賃上げを見るとメガバンクや生損保など以前から高給で知られる企業が堂々と大幅な賃上げ(5~7%程度)を発表しており、これらの企業は内部留保が豊かであり、今後金利上昇により利益が増えることから、来年以降も今年を上回る賃上げを続けると思われます。これらの企業が目指しているのは、海外の同業他社並みの待遇の実現です。これの先頭を行く商社では30歳で2,000万円~、40歳で3,000万円~、50歳で4,000万円~という夢のような報酬体系が近々実現すると思われますし、メガバンクや生損保がこれを追いかけることになります。こうしないと海外の従業員より国内の従業員の報酬が著しく低いという内外報酬格差が生じてしまうのです。これは日本の国際企業において全般的に起きる現象であり、商社やメガバンク、生損保以外の国際企業も同じだと思われます。このような国際企業の場合、円安により利益が膨らみますから賃上げの原資は円安で出るのですが、日本の企業の多くは輸出割合が低く円安のメリットよりもデメリットの方が大きくなる損益構造になっています。その結果日本の多くの企業においては、今後円安が海外からの輸入価格上昇によるコストアップおよび販売価格上昇による売上減少により、利益が減少すると予想されます。そうなると今後の賃上げは厳しくなります。

従って今後日本の企業は、積極的に賃上げをする(できる)企業と賃上げできない企業に2極分化します。その結果、日本においても富裕層とそうでない層がこれまで以上にはっきりと分かれてくると予想されます。今年がそれのスタート年となりそうです。