学費授業料無償化こそ少子化対策の特効薬

厚生労働省が6月5日発表した2023年の合計特殊出生率は1.20と過去最低を更新しました(合計特殊出生率は1人の女性が一生の間に産む子供の数。15~49歳女性の年齢別出生率の平均値)。政府は少子化対策の中心に児童手当を据え、0歳から3歳未満は月額15,000円、3歳から高校生までは月額10,000円、第3子以降は月額30,000円を給付することにしていますが、少子化対策としての効果は弱いようです。

日本経済新聞社(日経)が5月読者約5,000人を対象に実施したアンケートでは、政府の少子化対策に7割以上の人が「期待していない」と答え、有効な対策としては「小学校から大学までの学費無償化」が約半数を占めたということです。この通りだとすれば、こども対策を立案した人たちはどういう調査をしたのかということになります。これが分かっていたなら、政府の少子化対策の中に大学までの学費無償化のプランが入っていないと意味がないことになります。もちろん児童手当については必要とする人がいるのは事実であり、拡充する必要はあります。それでも子供を生める女性や夫婦にとって、将来かかる子供の学費が子供を生むうえで躊躇する最大の要因になることは、普通の家庭なら理解できると思われます。子供を生んだはいいけれど、学校行くようになって、小学校は公立学校で良いとして、中学校からは出来たら私立に行かせたいところです。その際にお金がなくて私立には行かせられないとなり、子供に悲しい思いをさせるのは避けたいところです。さらに高校は公立に行ったとしても大学は国公立でも年間の学費は50万円以上であり、私立だと100万円以上かかります。私立中学に行かせられない場合、大学の学費も出せない場合が多くなりますので、子供は奨学金とアルバイトで学費を賄うことになります。奨学金とは言っても実体は借金であり、大学卒業時点で200万円以上の借金を負わせることになります。これは現代のような不安定な社会では、子供を持つに当たっての最大の不安要素となります。

これが分かれば日経のアンケート結果は納得がいくものであり、政府は真摯に向き合う必要があります。3月27日に開かれた文部科学省の中央教育審議会「高等教育の在り方に関する特別部会」で慶応大学の伊藤塾長が国立大学の授業料を今の約3倍の年間約150万円に値上げするよう提言しましたが、これは少子化を加速する愚かな提案であることが分かります。慶応大学は富裕層の子弟教育機関であることから、慶応大学学生の家庭にとっては年間150万円の授業料負担は何でもないと思われますが、日本の勤労者の平均年収は約433万円(2021年)であり、より生活実態に近いと思われる中央値は約324万円となっています。これらの家庭では大学授業料の捻出が頭痛の種となるのは確実であり、子供を生むかどうかに大きな影響を与えるのは容易に分かります。このことが分かっていない慶応大学のリアルお坊ちゃま伊藤塾長の国立大授業料3倍値上げ論は暴論と言えます。5月16日には自民党の教育・人材力強化調査会が国立大学授業料の値上げを提言しましたが、これは国会に現在60人以上いる慶応OB議員が伊藤塾長と呼応した動きだと思われます。これから自民党は慶応OBに支配された政党であり、自民党に少子化対策は期待できないことが分かります。政党の中で少子化対策が期待できるのは、前原誠司代表の「教育無償化を実現する会」ということになり、次の総選挙での躍進が予想されます。