自民党甘利明議員は影の経済担当副首相?
裏金問題で殆どの派閥が解散した結果、自民党の有力者がいなくなってしまいました。岸田首相以外で有力者と言えるのは麻生副総理くらいだと思われます。麻生氏は麻生派を解散していませんし、政治資金規正法改正についても氏名等を公開するパーティ券購入額を10万円超から5万円超に引き下げることについて「将来に禍根を残す」と反対し、存在感を見せつけています。これを見ると自民党内最大の実力者は麻生氏とも思えますが、実は違います。実力者の基準を自分の指示に従う議員の数で言えば、麻生派には55人(4月27日現在)が所属していますから麻生氏ということになります。しかし実力者の基準をどれだけ予算(資金)を動かした(確保した)かにとれば、甘利明衆議院議員ではないかと思われます。甘利氏は岸田政権誕生時に岸田首相が幹事長に指名した岸田首相の盟友(ただし麻生派)で、その前は自民党税制調査会長、政調会長、経済産業大臣、TPP担当大臣などの要職を歴任した実力者です。岸田首相と同じ商工族(経産族)で経済政策に強いようです。TPPでのタフな交渉姿勢を見ると実力も折り紙付きと言えます。ただし経済財政担当大臣就任時の2016年に文春でUR口利き・金銭受領疑惑が報じられ大臣を辞任、幹事長就任直後の2021年10月の総選挙では選挙区で落選(比例区で復活当選)し幹事長を辞任しました。その後大臣や党の要職に就任することなく、何しているのだろうと思っていたら、意外にも資金配分で大きな役割を果たしていることが分かりました。先ず1つは、大学の10兆円ファンドの設立です。10兆円の予算を確保するには相当の大物議員の後押しが必要ですが、それが甘利議員のようなのです。それはあるテレビの中継で理系の若い女性研究者が支持する政治家を問われ、「10兆円ファンドを作ってくれた甘利議員」と答えたことを根拠にします。「本当かな?」と思っていたら、今年の2月に熊本で行われた台湾のTSMC工場(子会社のJASMが運営)の完成披露パーティに、斎藤経産大臣とともに甘利議員が招待されており、壇上でテープカットをする10名程度のメンバーの1人になっていました。JASMには日本政府から1兆2,080億円の補助金支出が決まっていますが、甘利氏は自民党半導体戦略推進議員連盟の会長に就任しており、この実現には甘利氏の役割が大きかったことが伺えます。2021年から2023年までに政府が半導体産業に投じた補助金は3兆9千億円となっており、今後もラピダスが2nm線幅の半導体を生産するに当たって必要な資金約5兆円を銀行借り入れで調達するに当たり、政府が全額保証するという報道です。これらを合計すると約20兆円(大学ファンドも含む)となりますが、これには甘利議員が大きな役割を果たしていると思われます。これだけの予算を確保できる国会議員は甘利氏以外おらず、予算確保に関して自民党の最高実力者と言ってよいと思われます。その分官僚や関連企業の幹部が甘利氏の元を頻繁に訪れていると思われますが、UR口利き疑惑もあることから甘利氏へ不正なお金が流れていないか注視する必要があります。