金融庁長官が損保不正の責任取らされて交代?

金融庁の栗田照久長官が退任し、7月5日付で井藤英樹企画市場局長が長官になるとの報道です。この理由について日経は、岸田文雄首相の肝煎りの政策である「資産運用立国」を推進するためと書いていますが、栗田長官の退任は損保不正の責任を取らされたもので、井藤局長が長官に選ばれたのは日経の指摘の通りのように思われます。栗田長官は就任後まだ1年しかたっていないことから、今回の退任について金融庁内や金融業界では驚きをもって受け留められたということですが、栗田氏は長官就任前監督局長を4年務めていますから、損保ジャパンとビッグモーターの不正を見逃した責任者であり、その後判明した損保の談合についても見つけられなかった責任があります。日経は、「大手損害保険会社の不祥事などに手堅く対応したとの評価がある」と書いていますが、これは自己保身から来たものであり、自分の責任が追及されないようよう厳しく対応しているように装ったものと思われます。監督業界で不祥事が発生したときに監督官庁が良くやる行動であり、損保業界の不正構造は何ら変わっていません。例えばビッグモーター事件の共犯である損保ジャパンでは、SONPOホーディングの桜田会長を退任させただけで、社長COOを務め桜田会長と共同責任があるはずの奥村社長は責任を問われず会長CEOに昇格しています。またSONPOホールディングは取締役の大部分を社外取締役が務めていることで有名でしたが、損保ジャパンの不正を防げなかったのはこの社外取締役が機能しなったことにも原因があります。しかし新しい体制ではその社外取締役の中から取締役会議長を選任しており、何の変化も見られません。要するに金融庁の処分は、経済同友会代表理事を務めた大物である桜田会長の首をとって厳しく責任を追及した感を出し、何度も検査に入りながら不正を把握できなかった金融庁の責任逃れを図ったものと言えます。しかしこの処分後も損保の不正取引が次々と露呈し、このままの幕引きでは済まなくなり、政府の方で栗田長官の退任を決断したものと思われます。

確かに栗田氏は監督局長を4年務めていますから、損保の不正体質が出来上がったことに責任があるのは間違いありません。しかし金融庁でこのことに一番責任があるのは、2018~2020年まで長官を務めた遠藤英俊氏ではないかと思われます。というのは、遠藤氏は長官退任(2020年7月)後4ヶ月目の2020年11月には監督先であった富国生命の顧問に就任し、翌年1月には東京海上日動の顧問に就任しています。これは金融庁在籍中に相当の恩恵を与えていないと実現しないと思われます。また遠藤氏は不正に関してSONPOホールディングが設けた社外調査委員会の委員長に就任した弁護士が所属する弁護士事務所の顧問にも就任しており、損保ジャパンの不正調査にも関与した可能性があります。その他いくつかの金融会社や会計事務所の顧問に就任し、2023年6月にはソニー銀行やソニー生命など金融庁監督先をグループに持つソニーフィナンシャルグループ社長に就任しています。元監督先からこれだけ誘われるということは、金融庁在籍中の行動がこれらの会社から好感を持たれたということであり、遠藤氏の下で金融庁全体の検査や監督が大甘になっていた可能性が高いと思われます。栗田氏も遠藤氏の薫陶を受けたと思われ、この頃金融庁の腐敗が進んだと予想されます。