豊田会長報酬16億円で他社の社長報酬爆上げ

トヨタ自動車(トヨタ)の豊田章男会長の2024年3月期役員報酬が前年より9億9,900万円から6億2,300万円増え、16億2,200万円だったことが明らかになりました。トヨタの2024年3月期の業績は、売上高約45兆円(21.2%増)、営業利益約4兆53百億円(96.4%増)ですから、文句を言う株主は少ないと思われます。ヤフーニュースのコメントを見ると、「少なくねー?」との声も見られます。

トヨタで2番目に高い佐藤恒治社長(2024年4月1日就任)が6億2,300万円(社長見習いという評価?)で、1億円以上の取締役が7人ということですから、やっとトヨタの取締役も魅了的な報酬になったと言えます。しかし国内企業でも日立製作所(日立。2024年3月期 売上高約9兆7,287億円、営業利益約7,558億円)は34人の役員が1億円以上ということですから、売上高で約4.5倍、営業利益で約6倍あるトヨタの役員報酬水準は日立より相当低いと言えます(トヨタと日立の営業利益を比較すればトヨタで1億円以上を得る役職員は204人いてよいことになる)。トヨタの場合、海外の同業他社と比べると役員報酬の差は更に大きいと思われ、今後の国際競争の低下に繋がりかねません。例えば韓国ヒョウデ(現代自動車)は、近年躍進を続け現在世界販売台数約730万台(2023年度)で世界3位の自動車メーカーになっていますが(子会社KIAと合わせて)、役員報酬は欧米体系であり、トヨタより相当高いと想定されます。それが世界各地でトヨタのシェアを奪うモチベーションになっていると思われ、今のトヨタの報酬体系ではヒョンデの勢いに勝てないように思われます。確かにトヨタも欧米の子会社の役員は欧米の報酬体系に基づいている(豊田会長より高い役員が何人もいる)ようであり、ヒョンデと変わらないのかも知れませんが、トヨタの場合、開発や企画は国内が主力であり、その担当役員の貢献は、海外子会社の役員より高いと思われます。従って国内の役員の報酬が海外の役員のそれに比べ著しく低い言うことは、徐々に国内役員および社員のモチベーションの低下に繋がる可能性が大きいと言えます。役員報酬と言っても固定給はそう高くなく(豊田会長でも2~3億円と思われる)、多くが業績連動報酬で、かつ株式報酬が多いことから、役員報酬の増大がキャッシュフローに与える悪影響は大きくありません。そのためトヨタは今後役員報酬をもっともっと上げることが必要となります。

これまで日本は日本一儲かっているトヨタの役員報酬、とりわけ豊田社長の役員報酬が低かったため、トヨタよりも利益で劣る他社は社長報酬を豊田社長以上に上げられずにいました。今回豊田会長の報酬が16億円を超えたことから、これらの会社の経営者が役員報酬の引き上げに動くと考えられます。その結果、報酬10億円以上の社長は相当出てきますし、役員報酬1億円以上は普通になると思われます。

同時に役員報酬が上がる結果、部長や課長の年収も引き上げられ、これに連れ他の社員も全体的に引き上げられることになります。ただしこれは儲かっている会社であり、儲かっていない会社では当然ありません。この結果儲かっている会社と儲かっていない会社の社員年収の差が目覆いたくなるほど開くことになります。そんなことが見えてきた豊田会長の報酬と言えます。